非常に困ったことになりました。 周囲では髑髏を模した仮面を被った男たちや顔に骸骨のようなペイントを施した女たちが、丸太に縛られたスコットさん……そのような名前だったと思います、もしかしたら違うかもしれませんが、諸事情で確認が取れないため仮にスコットさんとします。とにかくスコットさんを囲んで、野蛮な部族の皆様がなにやら叫んでいます。スコットさんはつい先ほどまではまだ元気に、元気にというか死に物狂いで命乞いの言葉や恨みを凝り固めたような罵声、故郷の家族への遺言なんかを喚いていましたが、今は静かに黙って頭の皮を剥がされています。静かにというか事切れているだけかもしれませんし、まだ息はあるものの気を失ってしまっているのかもしれませんが、どのみち私からはわかりません。 それにしても恐ろしくも悍ましい光景です……うぅ、どうしてこんなことになったんでしょう? なんて思ったところで状況が改善するわけでもないので、いったん落ち着いて物事を整理するところから始めましょうか。正しく状況を理解するのは必要不可欠です。私たちに勉学を教えた神父様も仰っていました、窮地を切り抜けるのは神への信仰と状況を正しく把握するための冷静さだ、と。前者は神職に就く者の建前で、後者こそが真に伝えたかったことだと思いますが、どうやらその仮説は正しく、今のところ神が降臨して状況を改善してくれる気配は見られません。神の存在を疑ってしまいそうです。ええ、神はいません。いたとしても今は休暇の最中なのでしょう。きっと下品な酒場で娼婦でも抱きながら、葡萄酒を頭から浴びているのです。神に対して不敬だと怒られそうですが、そういう俗物だとでもしないと神への信仰心が絶望と反逆の意思に塗り替えられてしまうので。 一方で彼ら、皮を剥ぎ終えて精霊への感謝を捧げている方々は、神はともかく精霊の存在は疑いもしていないようですが。 まず私の状況を整理しましょう。 私、ノルン・マイグラートはラステディン教会の研究機関に所属する新人です。新人も新人、俗っぽい言い方をすればド新人という立場です。学校を卒業したばかりの右も左もわからない新米で、配属されて2月3月ほどは雑用をこなしていました。これといった取り柄もなければ、座学はそこそこの成績だっただけで実地の無い新人に出来ることなど、掃除とお茶汲みと書類整理と配達くらいです。 そんな私に舞い込んできた...