投稿

もぐれ!モグリール治療院

イメージ
  <変な職業がいっぱい出てくるファンタジー小説>(連載中!) 【序章 ヤミー出立編】 ▶ 序章1「かわいい子には旅をさせろ」   ▶ 序章2「ゴブリンは5回までなら殴ってもいい」 ▶ おまけ「ゴブリン隊の日記」 ▶ 序章3「求む、水先案内人」 ▶ 序章4「未開の荒野でマイムマイム」 ▶ 序章5「筋肉とかわいいはいつだって正義」 ▶  おまけ「豚って何種類いるの?」 ▶  序章6「列車は鉄の塊だから盗んでもいい」 ▶ 序章7「ようこそ、冒険者の町スルークハウゼンへ」 ▶  おまけ「衛兵さんのお仕事」 【 スルークハウゼン編 】 ▶ 第1話「ギルドに登録しよう」 ▶ 第2話「町のお掃除をしよう」 ▶ 第3話「基礎教練を受けよう」 ▶ おまけ「派遣任務をやってみよう」 ▶  第4話「鉄槌を下してみよう」 ▶  第5話「鍛冶屋を覗いてみよう」 ▶  第6話「たまには早起きしてみよう」 ▶  おまけ「牢屋を襲撃してみよう」 ▶  第7話「酒場に繰り出してみよう」 ▶  第8話「墓地にいってみよう」 ▶  第9話「斡旋所を使ってみよう」 ▶  おまけ「クラスチェンジをしてみよう」 ▶  第10話「爆弾を投げよう」 ▶  第11話「闇医者に診てもらおう」 ▶  第12話「必殺技を会得しよう」 ▶  第13話「禁域調査に向かおう」 ▶  おまけ「攻城兵器を手に入れよう」 ▶ 13話時点でのステータス一覧 【フィアレアド越境 編 】 ▶ 第14話「難民キャンプを覗いてみよう」 ▶  第15話「地元民しか知らない道はちょっと危ない」 ▶  おまけ「ずいずい隧道だしお宝ポイ」 ▶  第16話「ボロは着てても心は錦」 ▶  第17話「汚れた手で足を洗うな」 ▶  第18話「3歩歩けば全部忘れる」 ▶  第19話「自由より重い足枷など無い」 ▶  第20話「血よりも命よりも重い自由のために」 ▶  おまけ「駅長さんのお仕事」 【オルム・ドラカ 編 】 ▶  第21話「待ちくたびれたじいさんの長い長い小言」 ▶  第22話「彼方...

もぐれ!モグリール治療院 第24話「強き者の王国」

故郷の兄姉の中で一番私を溺愛していたのは3番目の兄だった。私の兄姉はみんな下の弟妹に対して、砂糖たっぷりのお菓子よりもベタベタに甘い性格をしているけど、その中でもカルフ兄ちゃんの甘さはそれはもうすさまじいものがある。私がまだ3歳か4歳の頃、うっかりしてた私を庇って熊の一撃を受けて、額から頬にかけて大きな傷を負いながらも、妹が怯えてるだろっていう、え、そっちなのって理由で熊に怒って、そのままその日の夕食に変えてしまい、おまけに血塗れなのに満面の笑顔を浮かべてみせたり、とにかくすごいのだ。 ある日ふと戦士の血が騒いだのか、俺より強い奴に遭いに行くと言い出してノルドヘイムから旅立ち、年に何回かは顔を見せに戻ってきて、成長した私にデレデレになりながら冒険話を聞かせてきて、おまけに狩った熊肉だと釣った魚とか、骨で作った首飾りとか腕輪とか、そういったお土産も忘れずに用意していた。そんな素敵な兄がカルフ兄ちゃんである。 ここオルム・ドラカの樹海の奥の集落にいると噂のビョルンセルク。どうせだったらカルフ兄ちゃんだったらいいな、私のこれまでの冒険譚を聞かせてあげたいし、私の手柄を小さなものから大きなものまで、余すことなく褒めちぎってくれると思うから。 「ヤミー、兄姉仲良し、甘い、きっと」 ルチは以前ピリラ姉ちゃんに会ったことがあり、馬肉をおなかいっぱいごちそうになってるけど、カルフ兄ちゃんに会ったら、きっとびっくりするだろう。なんせピリラ姉ちゃんよりも強くて、輪をかけて私に甘いのだ。今度は食べきれないくらいの熊肉とか出てくるかもしれない。そうなったら干し肉をいっぱい作っておこう。 「でも、そいつもヤミーちゃんと似たような感じなんだよな? いきなり殴りかかってきたり、いきなり斧をぶん投げてきたり、そういうこと無いよな?」 子分のガルムが不安そうに、あれこれと心配し始める。私の子分に勝手にそんなことしないと思うけど、うちの兄たちの溺愛ぶりはそれはもうすごいので、ちょっとわからない。 「前に、もし私が夫になる男を連れてきたら俺より強いか試してやる、とは言ってたけど、ガルムはそういうのじゃなくて単なる子分だから大丈夫だよ」 「誤解されないように頼むぜ」 そうならないように努力はしてみるけど、死んだら死んだでその時だ。ちゃんと墓を作って、きれいな花と高いお酒をお供えしてあげよう。 「こいつの命...

もぐれ!モグリール治療院 第23話「迷いの森の道しるべ」

右を見ると吸い込まれそうな深くて暗い森、左を見ると鬱蒼と生い茂った先の見えない密林、前を見ても後ろを見ても旅人を惑わせるような緑の領地が延々と続いている。 「これは完全にあれだね」 「迷子、遭難、行方不明」 「ルチ、言っちゃ駄目! 言ったら事実としてそうなっちゃうから!」 私たちはまだ迷子ではない。人が迷う時、それは迷ったと認めた時だって誰かが言ってた気がする。誰も言ってないような気もしてきたけど、今はそんなことはどうでもいい。大事なのは、私たちは迷っていないという折れない心、強い気持ち、冒険者としての自負、そういう誇りみたいなものなのだ。誇りとは違うからしてあしからず、とにかく私たちは迷子でもないし、遭難もしていないし、行方不明にもなっていない。 いざとなったら木を切り倒して、森を滅ぼしてしまえば集落なり村なりに辿り着けるのだ。本当の意味での危機はまだ訪れていない。 「だから近道なんてやめようって言ったんだ……」 子分のガルムが森よりも深い溜め息を吐いてみせる。私たちは森の奥に滞在しているノルドヘイムの戦士を訪ねようと進んでいたんだけど、そこにいくには森を大きく迂回しなきゃいけなくて、そのまま向かうと到着には数日かかる。でも、まっすぐ進めば1日2日で着けそうだからと、森をひたすら真っ直ぐに進むことにしたってわけ。 そして本当に真っ直ぐ方位磁石に従って進んでいたはずなんだけど、行けども行けども何処かで見たような森の中。そんな馬鹿なと思いながらも、念のためナイフで目印をつけて進んでみたら、私たちの目の前に現れたのは何処かで見たようなナイフ傷だった。 どうやら本当に同じ場所をぐるぐると歩かされているみたいで、木々の間の獣道を進んでみたり、草に埋もれた廃道跡を歩いてみたり色々試してみたけど、結局このナイフ傷の木に戻ってきてしまうのだ。 「認める、迷子、確実」 「しょうがない、最後の手段だけど木を切っちゃうかー」 「最初の手段に使うのかよ、まあいいけどよ」 私は鞄から鉄の斧を取り出し、目の前の木に向けて力強く振り下ろした。 「お前ら、なにやってんだ!」 木を切り倒そうと斧を撃ち込んでいた私たちの目の前に、子どもくらいの背丈のネズミのような細長い尻尾の生えた女がひらりと舞い降りてきて、ポンチョからのぞく手足をバタバタと動かしながら、しゃがれた声で怒鳴りつけてきた。 「ここは我...

もぐれ!モグリール治療院 おまけ「名乗れ!モグリール治療院」

「カニ? ふふふっ、まあ私の敵じゃなかったよね。このノルドヘイムのヤミーちゃんからしたら、あの程度のカニなんて所詮ただの食材に毛が生えたようなものだよ。だったら毛ガニが食べたいなって話になっちゃうけどね」 得意気に鼻をふふんと鳴らしながら、普段とは違う雰囲気、ひとことで表現するならば『いい女感』とでもいうのかな。そんな雰囲気を醸し出しながら、目の前でペンを走らせるリザードマンに答えてみせる。 頭? 頭はおかしくなってない、私はちゃんと求められる私をやっているのだ。ここでいう求められるヤミーちゃん像というのは、いうまでもないモンスターガニを退治した英雄の姿そのもの。普段の私は英雄と呼ぶにはちょっとかわいさが過ぎるので、こうやってかしこまって大人の余裕みたいなものも振りまいてるわけなのだ。 15歳が大人を語るなって? うるさい、頭をかち割るぞ。 「いやあ、さすがですね。ヤミー様からすれば、かの殺戮の巨大ガニも敵ではないと。いやあ、素晴らしい。一体どういう訓練を積み重ねたら、そんな強さが得られるのです?」 「訓練というよりは生活がまさに修行そのものだね。私の故郷ノルドヘイムは、君たちリザードマンでは冬眠してしまうような極寒の環境に耐えながら、集落の中に入ってくる狼や熊と戦う。もちろん最初はただの足手まとい、だけど何度も親兄姉の狩りを見て学んでいくうちに、自分に必要な技術や敵の弱点を覚えていく。そうして成長していく内に一端の戦力となり、15歳になるとナイフ1本で獲物を狩りに行く。これはノルドヘイムでは一般的な成人の儀式でね、だからノルドヘイムの外で見るノルドの戦士はみんな、ナイフの1本もあれば熊を狩れるということなのだよ」 メモを取るリザードマンが驚きの余り、目を丸くする。 「つまりノルドヘイムでは生まれながらにして戦士として育てられる、そういうわけですね!」 「まあ、そういうことになるかな? 今私が纏ってる狼の毛皮、これは私がナイフ1本で狩った群れの女王だったものだよ。これに比べたらカニ如き、ちょっと頑丈な程度の食糧でしかないと言えるね」 少し離れた場所では、相棒のルチと子分のガルムが呆れたような目を向けてくる。いやいや、これも仕事なんだから。私の名を知らしめるためにも、取材はちゃんと受けないといけないじゃない。 そう、これは必要な仕事なのだ。 私たちはみんなより一足先に...

もぐれ!モグリール治療院 第22話「彼方で雷名を轟かせし者」

いつの時代でもそうだけど、見知らぬ場所で仲間と合流しようと思ったら、名前を知らしめるのが一番早い。強くてかわいい私ここにあり、とあちこちにまで広めてしまえば、当てもなく探すよりはずっと辿り着きやすくなるし、後から来る仲間たちも安心して旅が出来るのだ。 というわけで私ヤミーちゃんは、このオルム・ドラカの地でも雷名を轟かせないといけないので、村を襲う悪党とか山賊とかをボッコボコにしたリ、未知の遺跡を発見したり、世界かわいい選手権で優勝したりしたいわけだけど、この国にも冒険者ギルドみたいなのってあるのかな? 「なんか手っ取り早く名を上げる方法ないかなあ」 「だったら竜戦士になるのが早いだよ」 ボンボラ漬けのおいしい村から歩くこと数日、タルモ蒸しという秘伝のタレを塗りたくった魚を塩で包んで、蒸し焼きにした名物料理のおいしい峠の茶屋で休んでいると、店のおばさんが大きな顔とでっかい魚を割り込ませて教えてくれた。ちなみにおばさんはトロールという人間よりひとまわりもふたまわりも大きい種族で、背丈なんか私の倍近くはありそう。顔なんて胴体より大きいし、腕だって私の腰よりも太い。でも特に鍛えてるわけじゃなく、普通に育ったら普通にこの体格になった、ちなみにトロールの中では体格も普通くらい。トロールの戦士団とか衛兵隊とかいたら強そうだ。 「竜戦士になったらドラゴン様にもお目通り出来るし、戦士ギルドを通して色んな場所に行けるだよ。その代わり仕事場所は選べないから、そこはちょっと不便だべさ」 「……だったら遠慮しとくかなあ」 なんせ私は結構旅が好きなのだ。それに自由と気持ちを一番大事にしてるので、なるべく自由を奪われたくない。なので竜戦士になるのは却下だけど、竜戦士とやらと腕試しをして私の強さを轟かせるのはありだ。 「でも竜戦士とやらには興味ある! そいつ、どこにいるの!?」 「この先の村にもいるだよ。あんた方がこの前までいた村にもいるだよ」 どうやらそこら辺に普通にいるみたい。なんか大層な名前に聞こえるけど、いわゆる衛兵みたいなものなのかな。 ◆❖◇❖◆ 【竜戦士】 その名の通り竜のための戦士。つまりオルム・ドラカの支配者たるドラゴンに従う戦士で、予想通り他の国でいうところの衛兵みたいなもの。戦士になる条件はそれなりに腕が立ち、戦士としての適性があること。それとドラゴンへの忠誠心。なもんだから...