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モグリール治療院外伝 ― ルチ・フォナ ―

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モグリール治療院外伝 ―ルチ・フォナ― < 部族の少女と部族の人たちが物騒な冒険を繰り広げるサイドストーリー > ▶ 第1話「人食い部族に囲まれて生贄に捧げられそうになった話」 ▶  第2話「族長が夢に出てきた話」 ▶  第3話「ウミガメのようなスープを食べる話」 ▶  第4話「勇敢なヒルチ戦士と臆病な人間の話」 ▶ 第5話「紙と筆で理想を語り、鉄と火薬で現実を綴る話」 ▶ 第6話「広いようで狭い荒野と砂漠の話」 ▶  ≪データフェチに送るルチ・フォナ外伝データ集≫ ▶ クラス表 ▶ クラスチェンジ表 ▶ アイテムリスト(武器編) ▶ アイテムリスト(防具・装飾編) ▶ アイテムリスト(消費アイテム編) ▶ 部族図鑑 ※モグリール治療院本編はこちらから もぐれ!モグリール治療院 ※その他の小説はこちら 小説一覧

ルチ・フォナ外伝 第6話「広いようで狭い荒野と砂漠の話」

人狩りに遭遇したペペミカ族のみなさんを、それなりに安全な場所まで送り届けた私たちは、改めて他の部族との同盟交渉に向かうことにしました。向かうことにしたのですが、 「ノルン、様子おかしい。うんこ、我慢してる?」 「ルチさん、若い女子がうんことか言わないでください。ちょっと考え事をしてただけです」 私たちがこうやって移動している間にも、先日のような人狩りも現れているわけです。かといって毎回人狩りをどうにか出来る程の戦力はありません。前回は奇襲と地の利で勝ったに過ぎず、運が良かっただけともいえます、ろくな戦力にもなっていない私が言うことでもないですが。 人狩りは教会や騎士団から直接派遣された正規兵ではなく、あくまで非合法的な生業を得意とする商人ですが、部族側の抵抗が続くと、それこそ鉱山労働者を集める時のように騎士団が護衛に就くでしょう。そうなったら私たちには手も足も出ません。一般人が持てる武装はせいぜい鉄製か鋼、銃もルェドリア銃かアンゴディア式散弾銃のどちらかですが、騎士団の装備となると遥かに高価で性能の高いロンダリア鋼やランバール銀、ベルマー鉱石で作られた武具に、銃器も射程と威力どちらにも優れるベリニャ式狙撃銃になるわけです。 部族側と騎士団が戦った場合の結果は、先の大地の解放事変で示されています。装備に優れる騎士団に対して、部族側は勝ち目がありません。対抗するには外部からの協力、それこそ対等に戦うための武具、資金的な援助が不可欠となるわけです。 そのためにも部族側がまとまって、外部の協力者を募らないといけないわけですが……ジレンマですね。問題が大き過ぎるために、徒労に終わるかもしれない小さなことを進めざるを得ません。 徒労といえばで思い出しましたけど、再びあの移動をしないといけないんですよね。砂漠のタルダイ族の勢力下まで、なにもない荒野を延々と歩き続けるのはまさに徒労です。あの辛さと虚しさを味わってしまった今となっては、徒労というよりも苦痛が近いかもしれません。わあい、辛さと虚しさと疲れに苦しさと痛みが加わりましたよ。牛さんやお馬さんが代わりに歩いてくれた馬車が恋しいです。 「馬っ! 1頭だけでも貰っとけばよかった!」 急に大声を出したからか隣を歩いているルチさんや、前を進んでいた戦士のおふたりが怪訝そうな目を向けてきます。気が狂ったわけではないのですよ、ちょっとお馬...

ルチ・フォナ外伝 第5話「紙と筆で理想を語り、鉄と火薬で現実を綴る話」

荒野で人狩り……ルチさんたちは外からやってきて、部族の人たちを捕まえる商人たちを『人狩り』と呼んでいるそうです。その人狩りに連れられていたのは、ペペミカ族というかなり離れた地域の部族の方々でした。部族としての勢力はどちらかというと小さく、水源近くに集落を築いてひっそりと暮らしていたようです。そこに友好的な顔をして近づいてきた連中が、突如として人狩りに変貌して襲いかかりました。連中の数はそう多くないものの、一方的に銃で狙われてはひとたまりもありません。ろくに反撃する間もなく集落は壊滅、男や老人たちはみんな撃たれて、若い女と子供は連れて行かれてしまったというわけです。 「揉めごと避ける、なるべく。そう考える部族、多くないけど、少なくない」 ルチさんが言うには、かつての争いの名残もあって、外部の人間を恐れて穏便に済ませたいと考える部族もいるのだそうです。一方、ヒルチヒキ族のみなさんのように奇襲を仕掛けるような部族も当然いるので、その辺りの方針は部族や集落の長によるのでしょう。勢力の小さいペペミカ族のみなさんは、なるべく下手に出て刺激せずにやり過ごす、という方針を取っていたようです。 「戦わない、間違い……とは言わないけど、正解でもない。仲間逃がす、揉めたら危ない思わせる、戦い方、色々ある。準備しておく、大事」 そうですね。穏便に仲良く接することで避けられる争いもあるのでしょうけど、それが上手くいかなかった時の準備はしておくべきでしょう。人狩りに遭った方々には気の毒ですが、人間それほど善性では行動していないですからね。 かといって初めから敵として対応して、例えば攻撃を選んでいたとしたら、もっと被害は大きかったかもしれません。結局のところ、答えは結果でしかわからないのです。 「ねえ、ルチさん、どうにか保護できませんかね?」 ペペミカ族のみなさんの衰弱はかなり激しく、移動中に最低限の水と食糧しか与えられていなかったのか、特に子供は意識も朦朧としています。ゆっくりと水を飲ませて、馬車にあったパンをくたくたに煮て食べさせているのですが、所詮はその場凌ぎ、どこか落ち着ける場所でしばらく休ませるべきでしょう。 「保護、難しい。一時的、出来なくもない。ずっとは無理」 「無理なんですか? どうして?」 ルチさんは難しい顔をして言葉を選ぶようにしばらく唸って、ペペミカ族のみなさんに気を使った...

ルチ・フォナ外伝 第4話「勇敢なヒルチ戦士と臆病な人間の話」

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ヒルチヒキ族の集落で寝泊まりしだして10日ほど経ちました。慣れない食べ物に何度かおなかを下したり、夜な夜な幻聴に苦しめられたりしましたが、ここのみなさんとも少しは打ち解けてきました。 最初はルチさん以外には完全に疑いの目で見られていたものの、今ではまだ小さな子供たちと一緒に水を汲みに行ったり、お姉さんたちと一緒に狩りに出向いたりする程度には信用されているみたいです。信用というよりは、居るのを許してやるって程度ですけど。 個人的にはこのまま情が深まってしまう前に商人と接触して、どうにかピョルカハイム保護区から出たいところですが、商人とはいつ交易を行うのでしょう? 「ルチさん、次に商人と会うのはいつ頃ですか?」 ルチさんは矢で射抜いた獣と物置として使っているテントを見比べて、少し目を細めて考え込んで、 「毛皮、まだ少ない。この調子だと、1ヶ月、2ヶ月、もう少しかかる」 そう答えながら獣に石器ナイフを突き立ててとどめを刺して、解体の得意なお姉さんたちに渡しました。どうやら商人との交易はしばらく先のようです。 私は無事に元の生活に戻れるんでしょうか? さすがに月単位での暮らしには不安を感じますよ。 「……不安わかる。ノルン、証明したい。同盟、部族解放?」 「そうなんですよ。私としてもみなさんへの支援を早く取り付けたいわけです」 もちろん嘘です。そもそも諸部族解放同盟なる組織は存在しません。いざとなったら適当に人を集めてでっち上げる覚悟もありますけど、基本的にはルチさんたちに限らず、ピョルカハイム保護区の部族のみなさんを助けようという人はかなり奇特な部類でしょう。 しかし私は嘘を貫いてでも生き残りたいので、そういう組織があると偽りますし、自分さえも騙すくらいの勢いで実在すると言い張りますよ。 「毛皮売る前、出来ることある。他の部族、味方してくれる、増やす」 ……ルチさん、もしかして私の嘘に気づいてます? それとも良かれと思って提案したことが、逃げ道を塞いでいく形になっているだけですかね? その提案には首を縦に振りづらいですが、今の私の立場と状況を考えると返せる返事はひとつです。 「いいですね。支援者側も同志を募っているわけですから、こちらも同盟を作っておきましょう」 そう、首を縦に振る一択です。どうせこのまま何ヶ月も過ごすよりは、なにかしら動いておいた方が脱出の可能性も増える...

ルチ・フォナ外伝 第3話「ウミガメのようなスープを食べる話」

おはようございます。朝の陽射しは何処にいても優しいといいますが、荒野で人食い部族に囲まれたい状態で照らされると、さすがにそうは思えませんね。陽射しは目がくらむように眩しく、どちらかというと残酷に見えてしまいますし、テントの外では人食い部族……ヒルチヒキ族のみなさんが朝も早くから起き出して、原始的な石器槍を研いだり、簡素な桶を持ち出しだりしています。あまり見たくはないですが、昨日まで同じ調査団にいたスコットさんその他数名だった物体の名残が残っていたりして、なるほど残ったお肉は煙でいぶして燻製にするんですね。夜は毛布が欲しくなる荒野ですが、朝は日傘が欲しくなるような暑さになりますからね、そのまま放置するわけにもいかないでしょう。野生生物を狩りにも出るのでしょうが、毎日新鮮なお肉が手に入るとも限りません、保存を試みるのも当然でしょう。 失礼、ちょっと吐いてきますね。 ……げええっ。 ふう、昨日は捕まってから何も食べてなかったので胃液くらいしか出ませんでしたが、吐けばすっきりするというか、覚悟のひとつも決まるものです。スコットさんたちだったものは口にしたくないので、そこはなるべく避けるとして、少しでも彼らとの友好度を高めて信用を得て、どうにかしてピョルカハイム保護区から逃げ出さないと……! そうと決まれば仕事のひとつでも手を貸すべきですよね。なにかお手伝い出来ることはないですかね? 男性陣は槍や弓矢を担いでいるので今から狩りに行くようです。子どもたちと若い女性は水汲みですかね、木製の簡素な水桶を手にしています。高齢、といっても私たちの社会ではせいぜい中年といった方々は、干し肉作りや祭壇の掃除をしていますね。これは選ばれた方々の仕事でしょうから、手を貸すのはやめておきましょう。 「おはよう。えらい、ひとりで起きた」 背後から声を掛けてきたのはルチさんという少女で、この集落の中では唯一の標準語話者です。お姉さん方のような恐ろしい骸骨の化粧ではなく、左右の頬に1本ずつ白い横線を引いているだけなので、あまり部族感はありませんが、頭に獣の頭蓋骨を被っているのでやはり立派に部族の姿をしています。 どうやら一晩で価値観が彼ら寄りになってしまっているのかもしれません。目の前の少女が獣の頭蓋骨を被っていることに、もはや何の違和感も覚えませんし、むしろ頭蓋骨くらいなら安心してしまうくらいです。...