ピョルカハイム保護区の外、普段ドワーフの商品との取引が行われる外界との境界線は川向こうの崖の先、深く広がる森を越えた辺りにあります。森を避けるように崖道を北に迂回するか、反対に南に迂回して沼地を進むか、それとも森の中を突っ切るように獣道を進むか。ルートは三通りに分かれますが、どう進んでも目的地は同じ、大陸北部から中西部を繋ぐ大陸縦貫鉄道を有する大規模交易道、通称プランドーラ交易道です。 さらに南で大陸横断鉄道とも交差する交易道は、ハルトノー諸侯連合内の物流、鉱物資源の輸送、騎士団の行軍などあらゆる人と物の移動を支えています。 人が動けば物が動き、物が動けば金も動きますので、当然ピョルカハイム保護区との地下交易も行われるわけです。 「崖から先はヒルチヒキ族の縄張りではないんですよね?」 「そう。ヒルチヒキ族、荒野、川、崖まで。向こうの森、緩衝地帯」 緩衝地帯? 部族同士のでしょうか、それとも外の人間と部族側とのでしょうか。なにやら罠や危険が多そうな響きに聞こえますね。 「毒虫、毒鳥、毒蛇、いっぱいいる。普段暮らす、ちょっと不便、でも侵入者防ぐから便利」 なるほど、そこで生活してしまうと有害な、見方によっては有益な毒持ちの生物たちを排除する必要があります。部族側は外界からの侵略を妨げるためにそのままにしているようです、彼らはそうするべきと判断すれば森のひとつやふたつ簡単に焼くのでしょうけど。 「管理する人、いる。ヴァッカレラ族、はぐれ者」 「はぐれ者ですか」 いわゆる村八分的な風習があるのでしょうか。私としては同じ部族同士は仲良くしてもらいたいのですが。 「ヴァッカレラ族、牛の角、兜に着ける」 前もって教えられた知識が正しければ、ヴァッカレラ族は家畜化した水牛と一緒に移動しながら川べりで暮らす遊牧民的な部族です。革と銅板で固めた兜の左右には巨大な角を携えていて、それが彼らの誇りであり象徴なのだそうです。 見た目は蛮族めいていますが、彼らはどちらかというと穏やかな生活を望む気質の持ち主です。無闇に内輪揉めのようなことをするとも思えませんが。 「はぐれ者、牛の頭被る。かっこいい、でも度を越した」 「はぁ……」 基準はよくわかりませんが、ヴァッカレラ族の装飾として牛の角は有りで、牛の頭そのものを被ってしまうのは無しのようです。生活を共にする水牛、もっというと牛という動物種その...