ワラ・ネルゲ、ドゥエ! タンヌフ・ペリベルテ・プランドーラ、ジョムア・キーニ・ホルメス! ……と言われたところで、ヒルチヒキ族を含めたピョルカハイム保護区諸部族の言語体系を知らないとさっぱりわからないと思うので、いわゆる標準語に翻訳しよう。私ルチ・フォナと愉快な仲間たちは、プランドーラ交易道を南下する鉄道とやらに乗っている。歩かなくて済むのは楽だけど、一日中座っているだけというのは体が石のように凝るし、固いだけの板の上で尻が割れるくらい痛くなるし、不安定に揺れ続けるから油断するとすぐ気持ち悪くなるし、おまけに嫌になるほど煙を浴びせられる。 贔屓目に表現しても乗り心地は崖を転がり落ちる藁の塊以下、つまりは最悪だ。大陸縦貫鉄道は一定の区間を往復している鉄道同士を繋げているので、乗り換え場所でしばらく休めたり、運が良ければ1日2日のんびり過ごせたり出来るものの、こんなものに乗っていると頭がおかしくなると思う。 「気分転換、必要」 煙を防ぐために張った天幕の下でノルンに訴えかける。この天幕のせいで景色もわずかな隙間と後ろ側しか見えず、かといって天幕を外すと全身真っ黒に汚れてしまう。不快感と一緒に旅の楽しみを捨てるか、煤を浴びながら解放感を感じるか、最悪の選択肢しかないのはどうかと思う。 「そうですねー、私もさすがに気が滅入ってきましたよ」 ノルンがただでさえ半眼になりがちな瞳をさらに重たくしながら、うんざりした気持ちを顔全体で伝えてくる。確認するまでもなくカラとヤクシ兄さんも同じような感情を抱いているはずなので、次の乗り換えの時にでも思い切った気分転換を提案したい。 「でも駅逓街で気分転換といっても……お金も正直心許ないですし」 「気分転換に金、要らない。必要、餌だけ」 「まさか釣りとか言わないですよね?」 ノルンが疑うような目を向けてくる。もちろん気分転換なのだから釣り一択だ。犬を撫でるとかそういうのでもいいんだけど、噛みついてこない賢い犬がいるとは限らない。しかし釣りは何処でも出来る。町があるということは、そこには必ず川があるはずだし、そもそも森の中なんだから。 「イカ、釣れる」 「冗談はサメまでにして下さいよ。タコが川にも棲んでるのはわかりましたし、サメが砂漠にいるのも事実だったので受け入れましょう。でも、イカが森にいるのは明らかにおかしいですよ」 ノルンはどうやらイ...