投稿

モグリール治療院外伝 ― ルチ・フォナ ―

イメージ
モグリール治療院外伝 ―ルチ・フォナ― < 部族の少女と部族の人たちが物騒な冒険を繰り広げるサイドストーリー > ▶ 第1話「人食い部族に囲まれて生贄に捧げられそうになった話」 ▶  第2話「族長が夢に出てきた話」 ▶  第3話「ウミガメのようなスープを食べる話」 ▶  第4話「勇敢なヒルチ戦士と臆病な人間の話」 ▶  ≪データフェチに送るルチ・フォナ外伝データ集≫ ▶ クラス表 ▶ クラスチェンジ表 ▶ アイテムリスト(武器編) ▶ アイテムリスト(防具・装飾編) ▶ アイテムリスト(消費アイテム編) ▶ 部族図鑑 ※モグリール治療院本編はこちらから もぐれ!モグリール治療院 ※その他の小説はこちら 小説一覧

ルチ・フォナ外伝 第4話「勇敢なヒルチ戦士と臆病な人間の話」

イメージ
ヒルチヒキ族の集落で寝泊まりしだして10日ほど経ちました。慣れない食べ物に何度かおなかを下したり、夜な夜な幻聴に苦しめられたりしましたが、ここのみなさんとも少しは打ち解けてきました。 最初はルチさん以外には完全に疑いの目で見られていたものの、今ではまだ小さな子供たちと一緒に水を汲みに行ったり、お姉さんたちと一緒に狩りに出向いたりする程度には信用されているみたいです。信用というよりは、居るのを許してやるって程度ですけど。 個人的にはこのまま情が深まってしまう前に商人と接触して、どうにかピョルカハイム保護区から出たいところですが、商人とはいつ交易を行うのでしょう? 「ルチさん、次に商人と会うのはいつ頃ですか?」 ルチさんは矢で射抜いた獣と物置として使っているテントを見比べて、少し目を細めて考え込んで、 「毛皮、まだ少ない。この調子だと、1ヶ月、2ヶ月、もう少しかかる」 そう答えながら獣に石器ナイフを突き立ててとどめを刺して、解体の得意なお姉さんたちに渡しました。どうやら商人との交易はしばらく先のようです。 私は無事に元の生活に戻れるんでしょうか? さすがに月単位での暮らしには不安を感じますよ。 「……不安わかる。ノルン、証明したい。同盟、部族解放?」 「そうなんですよ。私としてもみなさんへの支援を早く取り付けたいわけです」 もちろん嘘です。そもそも諸部族解放同盟なる組織は存在しません。いざとなったら適当に人を集めてでっち上げる覚悟もありますけど、基本的にはルチさんたちに限らず、ピョルカハイム保護区の部族のみなさんを助けようという人はかなり奇特な部類でしょう。 しかし私は嘘を貫いてでも生き残りたいので、そういう組織があると偽りますし、自分さえも騙すくらいの勢いで実在すると言い張りますよ。 「毛皮売る前、出来ることある。他の部族、味方してくれる、増やす」 ……ルチさん、もしかして私の嘘に気づいてます? それとも良かれと思って提案したことが、逃げ道を塞いでいく形になっているだけですかね? その提案には首を縦に振りづらいですが、今の私の立場と状況を考えると返せる返事はひとつです。 「いいですね。支援者側も同志を募っているわけですから、こちらも同盟を作っておきましょう」 そう、首を縦に振る一択です。どうせこのまま何ヶ月も過ごすよりは、なにかしら動いておいた方が脱出の可能性も増える...

ルチ・フォナ外伝 第3話「ウミガメのようなスープを食べる話」

おはようございます。朝の陽射しは何処にいても優しいといいますが、荒野で人食い部族に囲まれたい状態で照らされると、さすがにそうは思えませんね。陽射しは目がくらむように眩しく、どちらかというと残酷に見えてしまいますし、テントの外では人食い部族……ヒルチヒキ族のみなさんが朝も早くから起き出して、原始的な石器槍を研いだり、簡素な桶を持ち出しだりしています。あまり見たくはないですが、昨日まで同じ調査団にいたスコットさんその他数名だった物体の名残が残っていたりして、なるほど残ったお肉は煙でいぶして燻製にするんですね。夜は毛布が欲しくなる荒野ですが、朝は日傘が欲しくなるような暑さになりますからね、そのまま放置するわけにもいかないでしょう。野生生物を狩りにも出るのでしょうが、毎日新鮮なお肉が手に入るとも限りません、保存を試みるのも当然でしょう。 失礼、ちょっと吐いてきますね。 ……げええっ。 ふう、昨日は捕まってから何も食べてなかったので胃液くらいしか出ませんでしたが、吐けばすっきりするというか、覚悟のひとつも決まるものです。スコットさんたちだったものは口にしたくないので、そこはなるべく避けるとして、少しでも彼らとの友好度を高めて信用を得て、どうにかしてピョルカハイム保護区から逃げ出さないと……! そうと決まれば仕事のひとつでも手を貸すべきですよね。なにかお手伝い出来ることはないですかね? 男性陣は槍や弓矢を担いでいるので今から狩りに行くようです。子どもたちと若い女性は水汲みですかね、木製の簡素な水桶を手にしています。高齢、といっても私たちの社会ではせいぜい中年といった方々は、干し肉作りや祭壇の掃除をしていますね。これは選ばれた方々の仕事でしょうから、手を貸すのはやめておきましょう。 「おはよう。えらい、ひとりで起きた」 背後から声を掛けてきたのはルチさんという少女で、この集落の中では唯一の標準語話者です。お姉さん方のような恐ろしい骸骨の化粧ではなく、左右の頬に1本ずつ白い横線を引いているだけなので、あまり部族感はありませんが、頭に獣の頭蓋骨を被っているのでやはり立派に部族の姿をしています。 どうやら一晩で価値観が彼ら寄りになってしまっているのかもしれません。目の前の少女が獣の頭蓋骨を被っていることに、もはや何の違和感も覚えませんし、むしろ頭蓋骨くらいなら安心してしまうくらいです。...

ルチ・フォナ外伝 第2話「族長が夢に出てきた話」

イメージ
ネラ・バナウ、ジノ! メル、デナ・マルホ、ヨマ・テーネ、チエルム・ヒルチヒキ! ……と言われたところで、ヒルチヒキ族を含めたピョルカハイム保護区諸部族の言語体系を知らないとさっぱりわからないと思うので、いわゆる標準語に翻訳しよう。どういうわけかわからないけど、夢の中にヒルチヒキ族の族長が出てきた。 ヒルチヒキ族は部族全体を統括する族長、その下に集落の長である首長、その下に儀式をつかさどる祭祀、その下に戦士たちと、戦いには赴かないけど色んな仕事をする一般ヒルチヒキ族がいる。族長は私の暮らす集落とは違う集落にいるはずなので、すぐに夢だと気付いたけれど、もしかしたら精霊の力を使ってなにか伝えに来ているのかもしれない。 私は姿勢を正して挨拶代わりに獣の牙と爪を手渡し、かなりの高齢なくせに顔付きに力強さと威厳を保つ族長と向かい合った。 「ルチ・フォナよ、偉大なるヒルチヒキ族に生まれた娘よ。今からお前に幾つかの問いを投げかける、周りや私の顔色を伺うことはない。正直に答えなさい」 「わかった」 「そこは敬語を使って欲しいところだが、まあよい。ではまず最初の問いを投げよう」 族長は静かに息を吐き出して、1拍2拍ほどの間を置いて言葉を発した。 「最初の問いだ。精霊への感謝を捧げる時、どの精霊から生贄を捧げる?」  火の精霊(火属性)  水の精霊(水属性) ▷土の精霊(土属性)  風の精霊(風属性)  雷の精霊(雷属性) どの精霊も偉大で感謝を捧げるべきだ。しかしあえて最初に生贄を捧げるとするならば、それは大地に対してだ。私を含むヒルチヒキ族を育んできた大地、この大地に宿る土の精霊に感謝の気持ちをを捧げたい。 「なるほど。次にルチよ、お前のことを聞かせてもらいたい。お前はどんな親の元に生まれた?」  戦士の子(腕力+1、槍術E→D) ▷狩人の子(命中+5、弓術E→D)  祭祀の子(魔力+1、魔道E→D)  首長の子(魅力+5、所持金+500)  孤児(守備+1、重装E→D) もちろん嘘ではない。私の両親は狩人だ、父は槍を片手に獣を三日三晩追いかけ回す執拗な狩人で、母は飛ぶ鳥を射抜く弓の使い手だ。私も母に習って弓をよく練習した。 「お前の現在を聞こう。お前にはどんな才能がある?」  丈夫で健康な体(HP+2) ▷遠くを見渡す目(命中+3)  誰よりも速い足(回避+3)  鋭い野生の勘(ス...

ルチ・フォナ外伝 第1話「人食い部族に囲まれて生贄に捧げられそうになった話」

イメージ
非常に困ったことになりました。 周囲では髑髏を模した仮面を被った男たちや顔に骸骨のようなペイントを施した女たちが、丸太に縛られたスコットさん……そのような名前だったと思います、もしかしたら違うかもしれませんが、諸事情で確認が取れないため仮にスコットさんとします。とにかくスコットさんを囲んで、野蛮な部族の皆様がなにやら叫んでいます。スコットさんはつい先ほどまではまだ元気に、元気にというか死に物狂いで命乞いの言葉や恨みを凝り固めたような罵声、故郷の家族への遺言なんかを喚いていましたが、今は静かに黙って頭の皮を剥がされています。静かにというか事切れているだけかもしれませんし、まだ息はあるものの気を失ってしまっているのかもしれませんが、どのみち私からはわかりません。 それにしても恐ろしくも悍ましい光景です……うぅ、どうしてこんなことになったんでしょう? なんて思ったところで状況が改善するわけでもないので、いったん落ち着いて物事を整理するところから始めましょうか。正しく状況を理解するのは必要不可欠です。私たちに勉学を教えた神父様も仰っていました、窮地を切り抜けるのは神への信仰と状況を正しく把握するための冷静さだ、と。前者は神職に就く者の建前で、後者こそが真に伝えたかったことだと思いますが、どうやらその仮説は正しく、今のところ神が降臨して状況を改善してくれる気配は見られません。神の存在を疑ってしまいそうです。ええ、神はいません。いたとしても今は休暇の最中なのでしょう。きっと下品な酒場で娼婦でも抱きながら、葡萄酒を頭から浴びているのです。神に対して不敬だと怒られそうですが、そういう俗物だとでもしないと神への信仰心が絶望と反逆の意思に塗り替えられてしまうので。 一方で彼ら、皮を剥ぎ終えて精霊への感謝を捧げている方々は、神はともかく精霊の存在は疑いもしていないようですが。 まず私の状況を整理しましょう。 私、ノルン・マイグラートはラステディン教会の研究機関に所属する新人です。新人も新人、俗っぽい言い方をすればド新人という立場です。学校を卒業したばかりの右も左もわからない新米で、配属されて2月3月ほどは雑用をこなしていました。これといった取り柄もなければ、座学はそこそこの成績だっただけで実地の無い新人に出来ることなど、掃除とお茶汲みと書類整理と配達くらいです。 そんな私に舞い込んできた...