もぐれ!モグリール治療院 第17話「汚れた手で足を洗うな」

「踊り子の一座? 聞いてないなあ……でも許可証は本物だな。おい、誰か何か聞いてるか?」
「どうせオルム・ドラカの亜人が気まぐれで呼んだんじゃないか? 亜人のやるこたはよくわからん」
「構わん、通せ。後でごちゃごちゃ言われても馬鹿馬鹿しい」
といった具合で、正真正銘本物の踊り子のロマを先頭に、踊り子風に着飾った私、同じく踊り子風に着飾って顔を舞踏用の仮面で隠したクアック・サルバー、特に何をするまでもなく雑用感のあるヤーブロッコ、一座の団長っぽく髪を油で固めて整えたモグリールは堂々とタンタモルラの富裕層の街、通称『楽園』に潜り込んだ。ちなみに武器の類は、幌馬車の荷台に板を張った二重底にして隠し、一見すると食糧や献上品しかないように偽装してみせた。
許可証ももちろん偽造品、門番の目を騙すとはクアック・サルバーの偽造の腕前は一級品だ。

「……なんであたしまで」
私の隣を歩くロマが溜め息混じりにこぼす。私たちの目的はオルム・ドラカから派遣された使者だか兵だかを捕まえることなので、戦力として当てにならないロマを連れてくる理由は薄いけど、なんせ私たち全員フィアレアド人でもなければタンタモルラに来たこともない。道案内がいないことには、どこに何があるのかすらわからないのだ。
その点、ロマは旅の一座にいた頃から何度も楽園に招かれたこともあって、それなりに町に詳しく、金持ちや衛兵とも面識がある。道案内としては適任なのだ。
「それに、あっちよりマシでしょ」
「そりゃあね、あんなのに混ぜられたら脱走一択だよ」
私の指差した南側の貧民街では、双頭の蛇自警団とカストリとシケモク、ルチと部族連合、ついでにバリスタとゴーレムがいつでも攻め込めように控えている。こっちで騒ぎを起こして監視の目を逸らすか、こっちから石壁を壊すなり扉を開けるなりしたら、一斉に坂を駆け上がって楽園を落とす手筈になっている。
その後がどうなるかなんて知ったことじゃないし、そこは住民同士で解決するべきなのだ。私はさっき一方的に砲弾撃ち込まれたから、弾の数だけ領主と衛兵をぶん殴ってやるだけ!

顔はにこやかに、でも視線はじろりと探るように街並みを見渡す。
楽園とか呼ばれてる場所だけど、道端には虚ろな目をしたまま頭も動きも止まってる連中が転がっていて、外なのに人目をはばからず尻を丸出しにして交わってる男女がいて、そういう汚れみたいな存在を視界に入れないように歩いている親子連れがいる。町はきれいといえばきれいだけど、なんていうか元気がないというか活気がなくて、どうにかして生きてやろうっていう活力みたいなものを感じない。豊かな町はそういうものなのかもしれないけど、暮らしたいかというと自分では選ばないかなって雰囲気だ。
衛兵は町の入り口と貧民街との境の石壁と鉄格子の前に集中していて、特に境界の衛兵たちは日の高いうちから酒瓶を片手にだらだらと過ごしていて、たまに遊び半分で貧民街めがけて銃を撃ったり、カタパルトで石を飛ばしたりしている。
それと町の中心部にある教会と領主の館の前だけは、きちんと直立不動の衛兵が配置されていて、時々近づいてくる麻薬漬けのおかしくなった住人を捕まえて、二度と立てなくなるくらい容赦なく殴りつけている。
どうやら領主と教会、それと一部の有力者は楽園の住人の中でも雲の上の人間で、特権的な立場にあるみたい。足を叩き折られて、石壁の向こうに転がり落ちていく薬漬けを見るからに、あながち間違いでもないってわかる。

「ヤミーちゃん、オルム・ドラカの奴の居場所を探りたい。あいつを捕まえれるか?」
モグリールが石壁から戻ってくる衛兵に目線を向ける。さっき麻薬漬けの住人を捨てに行った男で、配置されていた建物からして領主か有力者に雇われた私兵だと思う。確かにあれなら情報を持っている可能性が高い。
ここはひとつ、私の絶対的なかわいさの出番だ。幸いにも今は普段の冒険者姿ではなく、露出の多い踊り子姿。しなやかな肉体、張りのある肌、いい感じに割れた腹筋! これに魅了されない男なんて、もうなにかしらの取り返しのつかない不治の病に違いない。さあ、衛兵、遠慮なくこのヤミーちゃんに釣られてしまうがよい!
「……なんだ、ガキじゃねえか」
これだから病人はよお。思わず幌馬車の荷台からトマホークを取り出して投げつけようと手を伸ばしたその時、
「ねえ、お兄さん。そこで一緒に1杯どう?」
ロマが胸元をちらりと覗かせながら、簡単に衛兵を誘い出してみせた。衛兵はいやらしそうな目で鼻の下を伸ばし、まるで酒場にでも行く時のような足取りで近づいてくる。病人にしては元気な足取りだなあ!
「……え?」
周りの衛兵から死角になった瞬間、私は衛兵の懐に潜り込んで喉元にナイフを突きつけ、同時に脛の内側を思い切り蹴り払って転倒させる。そのままナイフの鞘を口を塞ぐように押し付けて、声を出すなと小声で告げた。

「おい、衛兵君。この町にオルム・ドラカの亜人がいるはずだ。居場所を知ってるかい?」
モグリールが衛兵の目に向けて、睫毛に届きそうな距離まで剣の切っ先を近づける。答えなかったら目を潰す、素直に答えたら見逃す、実にわかりやすい警告だ。刃は喉よりも目に向ける方が効果的かもしれない。
「教会の隣のでかい建物だ。元々領主の館だったが、今はオルム・ドラカのゲルモゲン様の屋敷になってる」
「なるほど。中の兵力はどのくらいだ?」
「わからない。屋敷の中には俺たち衛兵は入れないんだ、おそらくオルム・ドラカから一緒に来た私兵がいるはずだが、多分そんなに多くない」
おそらくとか多分とか情報としてはあやふやだけど、オルム・ドラカの使者は領主の屋敷にいるのは間違いないみたい。
「突然悪かったな、あとはゆっくり休んでくれ」
モグリールが衛兵の口の中になにやら放り込んだ。クアック・サルバーが私の耳元で、この町で流行ってる麻薬だとささやく。この町の麻薬は感覚を鈍らせて、まるで夢でも見ているような幻覚に覆われて、眠ったも同然の状態になるらしい。ちなみに中毒性はかなり強くて1度でも手を染めたら最後、もう麻薬なしでは暮らせなくなるとか。

「じゃあ、ちょっと邪魔者を排除してくる」
モグリールは薬漬けの衛兵を肩で担いで屋敷に近づき、ひとことふたこと言葉を交わすと、衛兵たちが薬漬けを抱えて診療所の方に向かっていった。残る衛兵ひとりもモグリールに話しかけに近づいて、またちょっと喋ったかと思ったら、にやにやと笑いながら他の衛兵たちの後を追いかけていった。
「案の定、汚職に塗れているようだね」
「なんでそんなのわかるの?」
「入り口の衛兵の態度だよ。部外者の前でオルム・ドラカの客人を侮蔑する、亜人は好ましくない言葉だからね。ああいう兵士のいる町は練度も民度も低いものだ」
クアック・サルバーが指先を丸めて硬貨の形を作り、私に屋敷に突入するように指差した。

え? 私が行くの? まだ監視員も殴ってないし、石壁も鉄格子も壊してないんだけど?


◆❖◇❖◆


「たのもーう」

といっても正面から入るわけにもいかないので、衛兵のいない間に壁伝いに上階までよじ登って、空いている窓から忍び込む。確かに中がどうなってるかわからないし、馬車が突っ込むわけにもいかないから私が適任なのはわかるけど、みんな私がかわいい女の子だってことを忘れてないか?
というわけで私が屋敷を調べている間に、ロマが表の広場で踊りを披露して人目を惹きつけて、ヤーブロッコとクアック・サルバーは石壁の扉を開けれそうだったら開ける、モグリールは様子を見ながらふたりの支援。私もあっちで大暴れする方がよかったな、後で覚えてろよ、あいつら。

「さて、どうしようかな」
領主の館は金持ちの権力者の家らしく部屋が沢山あって、廊下も長くて階段もふたつみっつはありそう。領主の部屋は一番豪華なところだろうけど、オルム・ドラカの使者がどういう扱いなのかわからないから、客室なのか空き部屋なのか想像もつかない。部屋をひとつひとつ調べてもいいけど、それで警備の兵と鉢合わせるのも面倒だし、かといって天井裏に忍び込むのも性に合わない。
「持ち主に聞くのが一番手っ取り早いよね」
よし、領主を捕まえて聞き出そう。口が堅いか緩いかは知らないけど、大抵の人は指の1本2本折ったり千切ったりしたら親切に教えてくれる。別に拷問が趣味なわけでもないから、なるべく親切な人だったらいいな。

「領主、出てこーい!」
廊下の真ん中の、いかにも金持ちが居そうな金ぴかに縁どられた扉で、入り口の左右に高そうな像なんかが置いてある部屋の入り口を蹴破る。扉の向こうから鼻を突くような嫌な臭いが流れてきて、まとわりつくような不快感と引っかかれたような刺激で、思わず目を細めて後ろに飛び退く。今まで嗅いだことのない、死体とも生ゴミとも腐った肉とも違う、なんとも言えない悪臭。
その主は人型だけど人間より倍ほども大きい種族で、鼻は潰れたように低くて目はぎょろりと丸く、口は大きく開いて歯はどれも板のように分厚くて並びはガタガタ、全身毛むくじゃらで肌の色は川底の泥のように黒く濁っていて、どこを切り取ってみても醜いという言葉がよく似合う。
その姿に反して装備は立派そのもので、いかにも鋭く頑丈そうな柄の長い斧に、一枚岩のような巨大な鱗を金属枠で囲った盾を手にしている。
おまけに部屋の中には護衛か召し使いかわからないけど、ゴブリンが数人。それも体格の大きく力強いホブゴブリンや更に攻撃的なアンシリーコートで、もれなく剣や槍で武装しているときた。

「一応聞いておくけど、領主……?」
領主かどうかよりも言葉が通じるかどうかの方が不安だけど、聞くだけ聞いてみる。うちのパーティーにも、だいぶ清潔感と見た目の癒し度合いが違うけど、人より大きめなサイクロプスもいることだし、もしかしたら激くさゲロヤバ生物が支配する町だってあるのかもしれない。
あってたまるかとは思うよ! でも領主のいそうな部屋にいるんだもん、もしかしたら領主かもしれないわけで!
「貴様ら人間の国には、吾輩のようなスプリガンが統治する国があるのか?」
激くさゲロヤバ生物が冷静に問い返してくる。なんか見た目がアレなのに冷静に返されると、なんか腹立つな。見た目と言葉に差があり過ぎるというか、素直にウボアァーとかグベギュアァーとか呻き声みたいなので喋って欲しい。意思の疎通を図る前に、見た目と臭いをどうにかしろ!
「じゃあ、オルム・ドラカから派遣された奴?」
「いかにも。吾輩はオルム・ドラカ本国からこのタンタモルラのふたつの街の統治を任されたゲルモゲン・ドルジレヴァである」
統治を任されたってことは、領主はもう亡き者になっているか、もしくは生きてるけど完全に服従してるって考えていいのかもしれない。だってスルークハウゼンでさえ街中にゴブリンを入れちゃ駄目なのに、領主の屋敷にゴブリンがいるのはおかしいでしょ。これが許されるんだったら、私だってスルークハウゼンの街中に住みたかったな。出来れば酒場の隣とか、肉屋の隣とか、喫茶店の隣とかに。

「納得いかないといった様子だな。それも仕方あるまい、だが現実としてフィアレアド王国はすでにオルム・ドラカの掌中に落ちている。王都も含めて主要都市、さらにはこのような辺境の地まで、貴様ら人間が亜人と忌み嫌う種族に支配されているのだ」
いや、そんなことはどうでもいいの。私は酒場の隣に家を借りたかったなってだけで。そもそもこの国の住人じゃないから、支配されていようと街中にゴブリンがいようと関係ない。
あれ? でもちょっと待って。
「なんで支配してるのに、国名がオルム・ドラカじゃないわけ?」
この国の名前はフィアレアド王国のままだし、表向きは人間が統治しているように見えるし、ハルトノー諸侯連合領と国境を巡って戦っているのは人間の兵士のはずだ。支配しているってのは嘘なのか? もしかして私を騙した?
「吾輩には理解しがたい話だが、我らが王がこう仰られたのだ。傀儡政権ってかっこいい響きだよね、と」
カイライ聖剣……確かに強そうな響きの剣だ。いや、多分そうじゃないとわかってるけど、カイライとか言われても知らないし。
それに、さっきからなんか、私よりこの激くさゲロヤバ生物の方が賢そうなのが腹立つ。だけどね、激くさゲロヤバ生物、賢さっていうのは知識の量だけを言うわけじゃないのだ。

「えいっ!」
私は窓に向かって走りながら鞄から火炎瓶を取り出し、屋敷の壁や廊下に向かって次々に投げつけた。火の手は見る見るうちに屋敷の端まで拡がり、私が外に飛び出した頃には外からもわかるくらいの煙を吐き出しながら、勢いよく燃え盛っていった。


◆❖◇❖◆


領主の館が焼け落ちたとなれば、さすがにやる気のない衛兵たちも消火や住人の避難に回らざるを得ない。でも街中は麻薬漬けの住人でいっぱいだし、火を消そうと水をぶっかけた屋敷から出てきたのは、町にいるはずのないゴブリンたちと見るからに醜悪な生き物。
こうなったらもう滅茶苦茶だ。貧民街の監視どころではないし、消火どころではないし、住民の避難どころではない。立て続けにもたらされた混乱で衛兵たちは何をどうしていいかわからず、でも人間としての本能というか、これまでの知恵と価値観でゴブリンたちの排除に走る。私たちはその隙に石壁の扉を開けたり、勝手に拝借した野戦砲で無茶苦茶に建物を壊したりして、とどめとばかりに貧民街から押し寄せた双頭の蛇自警団と武装した住人たち、さらにうちの頼れる山賊よりも強盗と破壊に手慣れた仲間たちによって、楽園はあっという間に陥落した。
賢さっていうのは、こういう風に使うものなのだよ、激くさゲロヤバ生物君。文字の読み書きからやり直した方がいいよ、私は読み書き出来ないけどね。

「実に理解しがたい行為だ、一体こんなことをして何の得があるというのだ!?」
「一対一でお前をぶん殴れるってことかなあ!」

私は私の象徴でもある狼の毛皮を纏って、激くさゲロヤバ生物に向けて飛びかかり、渾身の力でウォーハンマーを振り下ろす。奴の抱えてる盾は見た目以上に頑丈で重く、私の体格と腕力ではびくともしない。
「ぬうぅっ、人間らしからぬ威力だが、吾輩が授けられたこの盾、その程度で壊せるものではない!」
確かに壊すのは無理だ。でも重くて硬い盾は、奴の体格をもってしても取り回しが難しいみたいで、次の攻撃も受け止めるのが精一杯。明らかにこっち動きに追いつけていない。
こっちも奴が喋る度に喉が焼けるように痛むけど、耐えられないような痛みでもない。不快感には耐えきれないかもしれないけど。
「クアック・サルバー!」
「了解。武装解除命令」
激くさゲロヤバ生物の背後からクアック・サルバーが書類を突きつけ、武器を持つ腕を鎖で縛ったかのように封じてみせる。思った通りだ、頑丈さと引き換えに回避を犠牲にしてるから魔法や話術も当て放題。狙い通りにクアック・サルバーの掲げた規則に縛られてくれたおかげで、防御しかできない棒立ちになってくれた。
「汚物は消毒されとけ!」
棒立ちの激くさゲロヤバ生物に火炎瓶を投げつける。奴の頭に当たって割れた瓶は、真下にいる生き物を包むように炎を撒き散らし、酷い悪臭と共に豪快な黒い煙を立ち上らせた。

武器も盾も手放して、少しでも火を消そうと転げ回る醜い生き物を見下ろし、私は息を止めて悪臭に耐えながら再び渾身の一撃を叩き込んだ。醜悪な巨体の手足が二度三度と大きく地面を跳ねて、そのまま臭い煙をくゆらせながら完全に動きを止めた。
周りではあちこちから火の手が上がり、屋敷にいたゴブリンたちは大量の矢や銃弾に射抜かれて倒れ、衛兵たちも混乱に乗じた奇襲を受けてあちこちで倒れている。弾圧に逆らうんだと息巻いていた自警団はもはや強盗とゴロツキの集団にしか見えないし、これ以上付き合うと人として大事なものを失いそうな気がする。
モグリールは屋敷から逃げ延びた領主を掴まえて、ヤーブロッコはどさくさに紛れて野戦砲を抱えて、そのまま町の外へと向かっている。
「ヤミーちゃん、私たちもそろそろおさらばしようか」
「それもそうだね……と、その前に」
私はやたらと重たい頑丈な盾と立派な斧を担いで、のそのそと歩きながら町を後にすることにした。

「おい、お嬢さん。あんたたちのおかげで楽園の連中に一泡吹かせることが出来た!」
双頭の蛇自警団のなんだっけ? 兄の方が返り血まみれの笑顔で握手してくる。一泡どころか、これだけ泡を吹かせたらミイラにでもなりそうだけど、こいつらがそれでいいなら別にいいか。
「困ったらいつでも声を掛けてくれ。あんたたちはもう兄弟だ!」
こんな血の気の多い兄弟はいらない。でも窮地に駆けつけてくれるというなら、遠慮なく助けてもらおう。
「じゃあな、お嬢! あんたに貰った恩は一生忘れねえ!」
「旅に飽きたら来てくれよ! あんたならいつでも幹部にしてやるぜ!」
間違ってもタンタモルラを訪れることはないと断言できるけど、そんなことよりこれだけめちゃくちゃになった町で、こいつらどうやって暮らしていくつもりなんだろう?


なんにせよ、無事に強敵も倒せたし仕返しも出来たし、おまけに強い装備も手に入れたし、私はかなり活躍したと思う。なにか忘れてるような気もするけど……あれ? なんだったっけ? 臭いがきつすぎて思い出せないや。


取得:ドラゴンの盾×1、ロンダリア鋼の斧×1、オムニア野戦砲×1
習得:双頭蛇自警強盗団(射程3 単体に腕力+10の2回攻撃、高確率で装備品を盗める)


▶▶▶「3歩歩けば全部忘れる」


≪NPC紹介≫
ゲルモゲン・ドルジレヴァ
種 族:スプリガン(男、40歳)
クラス:スプリガン(レベル30)
    HP 腕力 魔力 守備 魔防 命中 回避 必殺 幸運 魅力 移動
能力値 50 17 12 29 26  9    5  2  1  ↑2↓3(歩兵)
成長率 70 30 30 40 40 20 15 20 10  0

【技能】
短剣:E 剣術:D 槍術:E 斧鎚:C 弓術:E 体術:D
探索:C 魔道:C 回復:E 重装:C 馬術:E 学術:B

【装備】
ロンダリア鋼の斧 威力33(16+17)
ドラゴンの盾   守備+10、魔防+10、回避-99、移動-1

【スキル】
【個人】醜悪なる異形王(戦闘開始時、自分以外に状態異常をひとつランダムで付与)
【固有】鼻がもげる体臭(周囲2マス 3ターンの間、回避-10)
【固有】目に沁みる掌汗(周囲2マス 3ターンの間、命中-10)
【固有】喉に刺さる吐息(周囲2マス 3ターンの間、必殺-10)
【固有】悪寒のする残香(周囲2マス 3ターンの間、幸運-10)
【??】


◆❖◇❖◆


仲間が寝静まった夜深く、モグリールは捕らえた領主だった男と静かに語り合っていた。語り合うと呼ぶには剣呑な、会話と呼ぶには非情を伴う場ではあったが、モグリールも別に領主の命が欲しいわけではない。彼が求めるのはあくまでも情報であって、目の前の男の命など拾おうが捨てようがどうでもいい事だ。

「さて、領主殿。貧民街で発症していた奇病、あれはなんだ?」
「詳しくは知らない。オルム・ドラカの連中が持ち込んだものだ。そうだ、あの醜い男、あの大男が運んできた液体だ。私も何度か問うてみたが、はっきりとは教えてくれなかった。本当だ、信じてくれ」
モグリールは懇願する領主だった男に呆れながら、冷たく感情の消えた瞳を向ける。その蛇のような目線に男は蛙のように縮こまり、暑くもないのに額から次々と滑り気のある汗を流し始めた。
「そうだ、奴らは実験場だと言っていた。人間に飲ませるとどんな変化をするのかと話していた、これ以上は知らない。陰で盗み聞きしたんだ、これ以上は本当に知らないんだ」
「まあ、嘘じゃないってのは認めるさ。ここで嘘をつく程、オルム・ドラカへの忠誠心も無いだろうからな」
「頼む、命だけは助けてくれ。もう悪事からは足を洗う、貧民への弾圧もやめる、償いもする、だからどうか命だけは……!」
「ああ、解放してやるよ。とっととどこへなり失せろ」
モグリールは領主だった男を解放した。夜の荒野、武器も食糧も、水も塩も無しでどれだけ生きられるかなど、それこそモグリールの知ったことではない。運が良ければタンタモルラまで辿り着けるだろうし、さらに運がわずかにでも残っていれば暴動が落ち着いて、次の領主となる人物が匿ってくれるかもしれない。
もちろんオルム・ドラカから怪物を招き入れ、町を分断した罪を問われる可能性の方が遥かに高いが、砂漠にだって雨が降れば、嵐の中で濡れずに済む物陰だってある。幸運とはそういうものだ。

「やはり禁域で見たものと同じ症状か」
モグリールは領主の姿が見えなくなったことを確認して、仲間たちの眠る野営地へと向けて足を進めた。


▶▶▶「3歩歩けば全部忘れる」

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