もぐれ!モグリール治療院 おまけ「誇り高き部族の宴」

ワラ・ドネバ、テヌ! クダン・ヌディ・シムヌ、ポルトテール、サベミャ・ホツヌ!

……と言われたところで、ヒルチヒキ族を含めたピョルカハイム保護区諸部族の言語体系を知らないとまったくわからないと思うので、いわゆる標準語に翻訳しておこう。私たちはポルトテールの酒場に集まって、周りからなんだなんだって視線を向けられながら、杯を片手に歓声を上げている。なんでかって? 説明するまでもなく再会の宴だ。

まず私の名前を名乗らせてもらおう。私の名はルチ・フォナ、誇り高きヒルチヒキ族の戦士で、狼毛皮の冒険者ヤミーと一緒にオルム・ドラカまでやってきて、道中離ればなれになってしまった傘下の戦士たちと商都ポルトテールにて再会を果たした。
「みんな無事でなにより。そして心配をかけてすまなかった」
「いいってことよ。隊長も元気そうでなによりだ」
そういって私の杯に酒を注ぐのは、砂の民と名高いタルダイ族の戦士トヴナ。説明するまでもないけどタルダイ族は蛇を砂漠の守り神として崇め、サソリを砂漠の悪魔と見做して憎む部族だ。大きな体で剣を握り、左右非対称の仮面を被って先陣を切る姿は、まさに一番槍。持っているのは剣だけど一番槍に相応しい戦士だ。
「……戦士だ、じゃなくてだな、なんで私も呼ばれてんだよ?」
説明を遮ったのは、ネズミのような細長い尻尾を生やすコルッカ族のアディラ。説明するまでもなくコルッカ族というのはオルム・ドラカの森の民だ。小柄な渡りの種族で、先々の戦士たちから子種を貰うために一緒に旅をしている。ちなみに昔、おばあさんだかひいおばあさんだかが部族の子種を貰ったことがあるそうで、意外と流暢に私たちと同じ言葉を扱える。

「そういえば紹介してなかった。みんな、彼女はコルッカ族のアディラ! 私とヤミーとついでにガルムという元奴隷の戦士が迷っている時に、道案内を買って出てくれた。歓迎すると共に彼女と精霊に感謝を捧げよう、乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!」
アディラが部族の乗りについてこれていないのか、若干呆れた顔をしながら酒をちびりちびりと舐めるように啜っている。ちなみにコルッカ族は独自の毒吹き矢を用いて狩りを行う習慣があり、アディラは3本の異なる毒を仕込んだ吹き矢を扱う名手だ、乾杯。

「それで、みんなは今までどうしてたんだ?」
「ああ、そこなんだ。俺たちはエルアラッドの町で隊長たちと離ればなれになってから、まずモグリールの旦那と合流した。そこで急遽川沿いを追いかける班と予定通りのルートでオルム・ドラカへと侵入する班とに分かれることになった」
そう語るのはヴァッカレラ族のザイ・フニ。説明は不要だと思うけどヴァッカレラ族は川べりを移動して暮らし、水牛の頭蓋骨で作った兜を被った部族だ。泳ぎも得意で川の変化も熟知している彼は、当然のように川沿いを進む班に加わった。というよりザイ・フニだけでなく他のみんなも共通語が不得手なので、部族連合は固まって行動することに決めた。
「当然、モグリール殿は予定通りのルートに進む。そこで人間は人間同士、それ以外はそれ以外で固まった方が良かろうと、カストリとシケモク、キキ、ロナード、ロマの共通語話せる組は預けることにした」
淡々と語るのはジェンリィン族のデ・ルルガ。説明とか不要な気もするけどジェンリィン族は人類で初めて車輪を発明したとされる部族だ。文化的で歴史に造詣が深く、私たちの中では長老のような立ち位置にある。年長者だけどまだ40代、長老と呼ぶような年齢でもない。

「おい、なんか知らない名前がいっぱい出てきてるぞ?」
「後で説明する。とりあえずそういうのがいるって流してくれていい」
聞き馴染みのない名前が次々と出てきて、思わず不機嫌そうに目を細めるアディラに申し訳程度に酒を注ぎながら、私は説明の続きを求めた。

「道中はとにかく大変だった。なんせ町や集落で補給を受けられないからね。俺たちは共通語が不得手だし、アイオリデス殿たちはいわゆるモンスター側の種族だから」
「しかし補給が受けられずとも生きる術は幾らでもある。その辺は隊長とヤミーちゃんのこれまでの旅を参考にした。要するに山賊狩りだ」
ドンガドンタ族のドドンゴ。歌と踊りを精霊へと奉げるドンガトンタ族は、私たちヒルチヒキ族と相通ずる点も多い。精霊をその身に降ろして、独自の進化を遂げた体術を繰り出す。
ウェデワン族のイェホー・シュア。断崖絶壁で暮らすウェデワン族は、他の部族よりも腕が長く、更には体型そのものを変えてしまうことも出来る。その独自性は常に相手の意表を突く。
「俺たちは山賊の隠れ家を襲撃してはその日を食いつなぎ、ようやくオルム・ドラカの国境へと足を踏み入れたんでぶー」
そう答えるのは傘下の中でも特に体躯の大きい……誰? え、誰? どこの誰?
どこかで見たような気がするようなしないような、しかし記憶を掘り起こしてもやっぱり心当たりのない太った男が、みしりみしりと椅子を軋ませながら腰掛けている。
よくよく傘下の面々を確かめていくと、さらに3人ほど知らない顔が混じっているのだ。

「……再会の儀式に捧げる生贄か?」
「その、すぐに生贄に捧げようとするのやめろ。衛兵が飛んでくるから」
私とアディラがじろりと眉間に皺を寄せながら見知らぬ面々を凝視していると、
「そうそう、こいつらは道中で保護したんだ。この太いのはズゥ・モー族のゴォ・ツァンシィ」
「よろしくでぶー」
傘下を代表してトヴナに紹介されると、全身に分厚い贅肉を纏った男が体の割に小さく会釈をしてみせる。ズゥ・モー族、確かピョルカハイム保護区の少数部族で、限界まで食べて出来るだけ眠り、更に体を鍛えるを繰り返して体重を増やした部族だ。そんなに大きくしてどうすると言いたくなるけど、格闘での力のぶつけ合いは体重と筋力が物を言うのも確かだ。この巨体なら私程度が殴っても微動だにしないだろう、銃で撃ってしまえばどうともでなるけど。

「反対にこの細いのはハタカプァ族のラルラド。薬草に詳しい」
「仲間たちはその多くが人買いに連れて行かれてしまった。その商人たちの町を、彼らやアイオリデス殿たちが焼き討ちにしてくれたんだ。心より感謝します」
ハタカプァ族はフィアレアド王国で迫害を受けていた部族らしい。あの国は奴隷制度が未だに残っている野蛮な国だし、どこの国であっても奴隷制はよくない。そんな奴らは町ごと燃やしてしまうのが一番なので、トヴナやでっぷりたちの行動は圧倒的に正しい。正義の鉄槌だ、どんどん食らわせたらいい。

「こっちの若いふたりはヴァルアリ族のウールゥとヌダルグ族のラウェン。猛禽使いと犬使いだ」
頭に羽根飾りをつけて肩に鷹を乗せた青年と、犬を模した魔物の仮面を顔の上半分に嵌めて足下に大型犬を従えた男が、呼吸を合わせたように深々と頭を下げる。礼儀正しい、大変によい。
「俺は荒野で野垂れ死にかけていたところ、食糧を分けて貰った。一宿一飯の恩は必ず返す」
「俺は犬と一緒に野盗に捕まっていたところを助けてもらった。もちろん喜んで力を貸そう」
ふたりとも似たような経緯で助けられて、そのまま仲間に加わってくれたらしい。おまけに野垂れ死にと捕虜とは思えないくらい顔色がいいので、ちゃんと腹いっぱい食べれているに違いない。胃袋を掴むのは人心掌握の基本、さすが私の仲間たち。基本をしっかり押さえている。

「よし、お前たちもこれまで苦労しただろう。おそらくこれからも時にはつらい禍が降りかかるだろう。しかし私たちが力を合わせれば、この先の困難もきっと乗り切れる! 出会いと力と絆に感謝して、精霊への祈りを捧げよう! 乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!」
私たちは杯をぶつけ合って、次々と酒を喉の奥へと流し込んだ。アディラは完全に呆れ返った様子だったけど、きっとこの宴が終わる頃には一緒に笑顔を浮かべて、適当な悪人を捕まえて頭の皮を剥ぎ、精霊への感謝を捧げてくれるはずなのだ。乾杯!


……というわけで、私たちは再会を喜ぶ宴を楽しんでいるのだ。
ちなみに新顔4人のことは当然、まだヤミーには話していない。明日改めて紹介するとして、そんなことより今日一番の大発見はフィアレアド王国で暮らす少数部族にも、私たちと同じ言語で話す部族がいたことだ。もしかしたらオルム・ドラカの中にも、同じ言葉を扱う者たちがいるのかもしれない。
もし私がいつかどこかでなにかしらの偉業を成した時は、広大な土地を手に入れて、みんなで国を作ってみるのもいいかもしれない。そうと決まれば精霊に捧げる生贄を探しに行こう。とびきり悪党から剥いだ皮を捧げて、焚き火を囲んで歌と踊りを奏でたら、もっと仲良くなれるに違いない。乾杯!


▶▶▶「ギルドハウスはなるべく頑丈に」


≪加入ユニット紹介≫
ゴォ・ツァンシィ
種 族:ズゥ・モー族(男、35歳)
クラス:ズゥ・モー族(レベル28)
    HP 腕力 魔力 守備 魔防 命中 回避 必殺 幸運 魅力 移動
能力値 45 22  3 15  5 14  1  8  3  4  2↑2↓3(歩兵) 
成長率 50 40 10 35 15 25  5 15 10 10

【技能】
短剣:E 剣術:E 槍術:E 斧鎚:E 弓術:E 体術:C
探索:C 魔道:E 回復:E 重装:E 馬術:E 学術:D

【装備】
装備不可能

【スキル】
【個人】大飯喰らい(自身に対して食糧やエールを一度に最大3つ使用できる)
【固有】素手格闘(素手での格闘を可能にする)
【固有】贅肉の王(一切の武器防具が装備出来なくなる)
【固有】清めの塩(射程3 範囲2×4マス 3ターンの間、アンデッド系の侵入を妨げる)
【固有】四股踏み(大地を揺らして隣接マスにスタン効果発動、飛行浮遊系無効)
【??】


ウールゥ
種 族:ヴァルアリ族(男、24歳)
クラス:ヴァルアリ族(レベル29)
    HP 腕力 魔力 守備 魔防 命中 回避 必殺 幸運 魅力 移動
能力値 29 13  6  6  7 33 36 25  9  9  3↑3↓3(山岳) 
成長率 35 30 10 15 10 40 25 20 15 20

【技能】
短剣:E 剣術:E 槍術:E 斧鎚:E 弓術:C 体術:E
探索:C 魔道:E 回復:E 重装:E 馬術:E 学術:D

【装備】
ロングボウ  威力21(8+13)
森番のマント 回避+20

【スキル】
【個人】鳶と油揚げ(弓を装備時、命中・必殺+10)
【固有】鷹の目(鷹を飛ばし、3ターンの間、間接攻撃の命中+10)
【固有】鷲の爪(鷲を飛ばし、3ターンの間、攻撃した対象に追加ダメージ+3)
【固有】梟の森(夜の間、命中回避+10)
【固有】隼の羽(矢に隼の羽を付け、3ターンの間、弓の射程+1)
【??】


ラウェン
種 族:ヌダルグ族(男、22歳)
クラス:ヌダルグ族(レベル27)
    HP 腕力 魔力 守備 魔防 命中 回避 必殺 幸運 魅力 移動
能力値 30 16  3  8  6 12 43 10  7  8  4↑2↓3(歩兵) 
成長率 40 35 10 20 15 20 40 10 15 15

【技能】
短剣:C 剣術:E 槍術:E 斧鎚:E 弓術:E 体術:E
探索:C 魔道:E 回復:E 重装:E 馬術:E 学術:C

【装備】
フンガムンガ 威力25(9+16)
森番のマント 回避+20

【スキル】
【個人】荒野の番犬(味方と隣接している時、腕力+2)
【固有】犬笛(犬を呼び出し、猟犬を用いたスキルを使用可能にする)
【固有】穴掘り(射程5、埋もれたアイテムを発見・回収する)
【固有】遠吠え(周囲5マスに腕力%でスタンを付与)
【固有】足止め(射程5、指定ユニットに確定で移動封じ付与)
【??】


ラルラド
種 族:ハタカプァ族(男、33歳)
クラス:ハタカプァ族(レベル30)
    HP 腕力 魔力 守備 魔防 命中 回避 必殺 幸運 魅力 移動
能力値 29  9 12 10 12 13 13 11 12  9  3↑3↓3(山岳) 
成長率 30 20 25 20 25 25 20 10 30 20

【技能】
短剣:E 剣術:E 槍術:D 斧鎚:E 弓術:E 体術:E
探索:C 魔道:D 回復:C 重装:E 馬術:E 学術:C

【装備】
カウフォーク 威力17(8+9)
鋼の盾    守備+3

【スキル】
【個人】自然治癒(自身の状態異常からの回復を1ターン早める)
【固有】薬治呪方陣(次ターンから薬草や毒草を用いた儀式を可能にする)
【固有】薬餌の儀式(周囲5マス以内のユニットの状態異常を回復)
【固有】快癒の儀式(周囲5マス以内のユニットのHPを魔力×2回復)
【固有】悪疫の儀式(周囲5マス以内のユニットに毒を付与)
【??】

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