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12月, 2025の投稿を表示しています

小説・目次

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主に長編の小説を掲載しております(のんびりぼちぼち更新していく予定) 以下、主な長編シリーズ ▶ 三界廻って碗(不定期連載中) 土着の神様と綴るヘンテコ民俗学小説 ▶ もぐれ!モグリール治療院(連載中) 変な職業がいっぱい出てくるファンタジー小説 ▶  彼女は狼の腹を撫でる (完結) 狩狼官の少女ウルフリードが失踪した母を探して旅する本格ファンタジー大長編 ▶  ラニーエッグボイラーシリーズ(完結) 空中に浮かんだ卵と、卵が見える人たちの非合法・有暴力・闇鍋群像劇 ▶  共食魚骨・断編集「魚の骨は猫でも食べない」(完結) ラニーエッグボイラー外伝、死神ヨハネこと共食魚骨に関する断片集或いは断編集 ▶  とある竜たちの話(完結) いわゆるファンタジーのドラゴンたちとはちょっと違った竜たちのお話 <二次創作> ▶ ぷかぷか!メガロドン海賊団航海記(完結) 世界樹の迷宮Ⅲリマスター・大航海オンリー二次創作小説、海賊マイラの波乱の航海記! ▶  山田とゴリラ(完結) 世界樹の迷宮Ⅱリマスター・日記風二次創作プレイ記、山田とゴリラの二人旅。  ▶  「ダーラボンの娘は話が長い」 聞いて聞いてFFT面白いよプレイ記小説

もぐれ!モグリール治療院

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  <変な職業がいっぱい出てくるファンタジー小説>(連載中!) 【序章 ヤミー出立編】 ▶ 序章1「かわいい子には旅をさせろ」   ▶ 序章2「ゴブリンは5回までなら殴ってもいい」 ▶ おまけ「ゴブリン隊の日記」 ▶ 序章3「求む、水先案内人」 ▶ 序章4「未開の荒野でマイムマイム」 ▶ 序章5「筋肉とかわいいはいつだって正義」 ▶  おまけ「豚って何種類いるの?」 ▶  序章6「列車は鉄の塊だから盗んでもいい」 ▶ 序章7「ようこそ、冒険者の町スルークハウゼンへ」 ▶  おまけ「衛兵さんのお仕事」 【 スルークハウゼン編 】 ▶ 第1話「ギルドに登録しよう」 ▶ 第2話「町のお掃除をしよう」 ▶ 第3話「基礎教練を受けよう」 ▶ おまけ「派遣任務をやってみよう」 ▶  第4話「鉄槌を下してみよう」 ▶  第5話「鍛冶屋を覗いてみよう」 ▶  第6話「たまには早起きしてみよう」 ▶  おまけ「牢屋を襲撃してみよう」 ▶  第7話「酒場に繰り出してみよう」 ▶  第8話「墓地にいってみよう」 ▶  第9話「斡旋所を使ってみよう」 ▶  おまけ「クラスチェンジをしてみよう」 ▶  第10話「爆弾を投げよう」 ▶  データフェチに送るモグリール治療院データ集 ▶ クラスチェンジ表(縦軸・主に戦闘系) ▶ クラスチェンジ表(横軸・アイテム発見系) ▶   クラスチェンジ表(横軸・回復系) ▶   クラスチェンジ表(横軸・準戦闘系) ▶   クラスチェンジ表(横軸・補助系) ▶   クラスチェンジ表(横軸・その他) ▶ クラスチェンジ表(亜人・モンスター系) ▶ 装備品リスト ▶  アイテムリスト ▶  人物名鑑(メインキャラクター編) ▶  人物名鑑(序章の仲間たち編) ▶  人物名鑑(スルークハウゼンの仲間たち編) ▶  ※恥ずかしながら途中でぶん投げちゃった旧note版はこちらから  ▶  潜れ!!モグリール治療院

もぐれ!モグリール治療院 第10話「爆弾を投げよう」

どうやら近々、禁域という普段は立ち入れない巨大樹海の調査が始まるらしく、スルークハウゼンの町全体がいつもより活気づいている。活気づいているというよりは浮足立ってるとか殺気立ってるって言った方が正しいかもしれないけど、なにはともあれ元気があるのはいいことだ。 いいことなんだけど、斡旋所から帰ってみんなに相談してみたところ、 「極端な危険、避ける、最善。行く、中止」 「オルム・ドラカが冒険者をどう認識してるか不明ですからね、もっと慎重に動くべきでしょう」 「いつか行くとしても、なるべく情報が欲しいな。よくわからないまま行って、それこそ魔王だのドラゴンだのに遭遇するのは避けたい」 みんなはいまいち乗り気じゃないどころか、出来るだけ避けたいという態度。でっぷりやピギーやゴブゴブズは同族や近い種族だったら受け入れてもらえそうなのでは、とか思ったけど、 「同じ種族だからって仲良く出来るとは限らないだろ。人間が未だに人間同士で戦争してるのがわかりやすい例だ」 なんて言われたら、まあそうだねーとしか答えようがない。 「では、ヤミーちゃんは禁域へは行かないわけだ。私はモグリールに乗るつもりだがね」 「俺もモグさんに同行するつもりだ。深入りするつもりもないけど、この辺で地道に稼ぐよりは儲かりそうだからな」 クアック・サルバーとヤーブロッコは、前から時々話に出てくるモグリールという冒険者と同行するつもりらしい。どうやら斡旋所で出会ったもじゃもじゃの闇医者、奴がモグリールその人みたい。ふたりは私とモグリールが馬が合いそうって言ってたけど、あんまりそんな感じはしなかったかな。 なんか、あの腹の中で悪だくみしてそうな感じが、どうにも好きになれなさそうというか。油断ならないなって身構えてしまう。 私に危害がなければ、別になに考えててもいいんだけどね。 とはいえ禁域に興味がないわけでもないので、ちょっと話でも聞いてみようと冒険者ギルドに向かっていたんだけど、すぐ近くの道具屋の前に騒々しい人だかりが出来ていた。泥棒か強盗でも現れたのか、それとも看板娘のお姉さんに求婚する馬の骨でも現れたのか、こんなギルドの近くで騒ぎにすることもないのに。 「ねえ、なんの騒ぎ?」 「なんだ、ヤミーちゃんか。まったく、たちの悪い冒険者がポーションを安くしろって脅してんだよ」 「ウォードッグスの連中さ。あの軍人崩れども、腕...

もぐれ!モグリール治療院 おまけ「クラスチェンジをしてみよう」

「ねえ、君たち、いい感じに進化とか出来ないの?」 我らの頭目、ヤミーちゃんが突然そんなことを言ってきました。どうせいつもの気紛れや思い付きなのでしょうが、改めて話を聞いてみたところ、どうやら彼女は雪の女王と呼ばれる真っ白い老狼を討ち取り、その毛皮を纏ったことでヴァイキングからウルフヘズナルになったそうで、我々にもそういった戦力強化、いわゆるクラスチェンジが起こらないか期待しているとのこと。 我々もれっきとしたパーティーの一員、頭目の期待に応えるべく、日々猪を狩ったり鹿を狩ったり、暇な時はひたすら案山子を殴ったり、書物を読み込んだりして鍛錬を続けていますが、どうにも周囲からおまけ程度にしか見られていない現状を鑑みるに、おそらくそういうことなのでしょう。 私は下級職、ゴブゴブズに至っては基本職のまま。不本意ではありますが、見た目からして雑兵と思われても仕方ありません。ならば頭目の顔に泥を塗らぬよう成し遂げてみようではありませんか、クラスチェンジとやらを。 申し遅れました、私はピギー・ワイルドボー。ヤミーちゃん配下の少々地図を読むのが苦手なオーク兵です。 ◆❖◇❖◆ 「いや、俺はしないぞ。サイクロプスにはサイクロプスたる誇りがある」 「転職、無理。ヒルチヒキ族、忘れない、精霊、祈る」 早速パーティーの主軸でもある参謀格のアイオリデス殿と、ヤミーちゃんの相棒的な立場にあるルチさんに相談したところ、文化的、宗教的な理由で却下されてしまいました。ついでにルチさん配下の部族連合にも断られましたが、まあそこは予想通り。せめてどちらかだけでも乗って欲しかったのですが、皮を剥がされたくないので無理強いは出来ません。 古の伝承にでは亜人種族やモンスターから、それこそ人間種族であっても魔王が誕生するといいます。また世界のどこかには邪道騎士と呼ばれる、人でも魔でもない、狭間の世界に生きる騎士の存在も耳にしたことがあります。彼らがそういったものになるかはわかりませんが、一縷の望みは抱いておきましょう。 「あなたたち、クラスチェンジをしてみませんか?」 「ブシュウウウ」 「メブェェェェェェ!」 次に声を掛けたのは、今のところパーティーの戦力としてプラスにもマイナスにもなっていないタコと羊。 ええ、もちろん断られました。言葉が通じないので断られたのかどうかも不明ですが、戦力の底上げは失敗したようで...

もぐれ!モグリール治療院 第9話「斡旋所を使ってみよう」

冒険者ギルドの裏手には一際大きな建物があって、普段はなんだこれってくらい空いてないんだけど、今日はなんだか人がいっぱい出入りしている。もしかしたら爆安市でもやっているのかもしれない、強い武器でも売ってないかなーと期待して覗いてみたら、 「おい、そっちの15番、うちのパーティーにくれ!」 「こっちは7番だ、ちょうど弓兵が足りてなかったんだ!」 建物の中は真ん中あたりで二つに分けられて、入り口側にはギルドでも何度か見た顔の連中が奥に向かって喚き、奥にはまだ若い、といっても私よりは年上が多そうだけど、全体的に若い男女がずらーっと並んでいる。どうやら番号が振られているみたいで、呼ばれたら柵というかカウンターというか、とにかく真ん中の仕切り板を越えて入り口側までやってきて、一言二言交わして一緒に帰っていく。 ……こいつはアレか? 人身売買というやつなのか? スルークハウゼンは奴隷制じゃないって聞いてたけど、もしかしたら裏でこそこそ奴隷を扱っているのかもしれない。ヤーブロッコの両親は貴族の使用人だし、奴隷がいても別に不思議ではないんだけど。 でも奴隷はよくない、奴隷には自由が無いからだ。それに奴隷と持ち主を分ける明確な基準がないのも気に入らない、力で屈服させるとか、あばらを何本か折るとか、そういう人を従える力の証明も無しに人を扱き使おうって腹積もりが気に食わない。そんな奴こそ奴隷にしてしまうべきだと思う、とりあえず顎でも砕いてから! 心の中で拳をぶんぶん振り回していると、私のすぐ隣で鳥の巣みたいなもじゃもじゃの癖っ毛をした中年男が、じめっとした死んだ魚のような目を向けながら奥の奴隷たちを値踏みしている。 「今回はいまいちだな……まあ、いいか。おい、3番と5番、それと21番、24番、32番。お前らは俺のところだ」 ひとりで5人も奴隷を抱えるとか贅沢だな! お前は屋敷にでも住んでるのか、このもじゃもじゃめ! 「なあ、ヤミーちゃん、だっけか? さっきから睨んでくるけど、なんか勘違いしてないか?」 「だって奴隷……」 「そんなわけなないだろ。この町は奴隷制は禁止されてる、違反者は問答無用で死刑だ」 もじゃもじゃが呆れたように息を吐いて、近づいてくる若者5人に向けて雑に手招きした。 もじゃもじゃが言うには、ここは斡旋所という場所らしくて、戦士や冒険者の紹介をしてくれるところ。主にパーティ...

もぐれ!モグリール治療院 第8話「墓地にいってみよう」

スルークハウゼンの城壁外、歩いて数時間ほどの小高い丘の上にあるデリオ・ビング霊園は、町が管理する墓地のひとつだ。主に外からやってきた冒険者や身元不明の死者、死刑となった囚人の埋葬地で、そういう家族や縁者のいない人の墓は放置されて荒れる傾向にあるから、いっそのこと一箇所にまとめて管理してしまおうと20年ほど前に作られた。 冠となるデリオ・ビングは、数百年前この地の盟主だったとか有力者だったとか、この地の最初の開拓者だったとか、初めてチーズを開発した人だったとか、いまいち何をしたのか定かでない人の墓がそもそも存在していて、じゃあせっかくなんでと墓の周りに墓地を増設したから。 そんなわけでデリオ・ビングの墓を中心に、切り株の年輪みたいに誰の者とも知れない墓が円の形で立ち並び、今ではその数は1000を超えるとか。 なんで急に墓地の話なんかしてるかというと、数日後に建国祭とかいうお祭りがあるらしくて、それに合わせて各墓地で鎮魂祭も行われるそうで、年に1度その辺りで一斉に掃除してるんだとか。で、城壁内の墓地は近所のおじいさんおばあさんと子どもたちで掃除するけど、さすがに危険な城壁外まで向かわせるわけにもいかないし、冒険者ギルドに墓地清掃の依頼が出るってわけ。 「墓地清掃はいいぞ。なんせ誰もやりたがらないし、誰もやりたがらないってことは競合相手がいないってことだからな」 ヤーブロッコが妙に乗り気だったので、私も一緒にお掃除に行くことにした。奴が言うには、墓地には死者が生前好んだ食べ物がお供えされるものだけど、たまに形見の指輪とか武器とか置いていく人もいて、それがしばらく放置されている間に風に吹かれて転がり、その辺りの草むらの中に眠っているらしい。 「墓の上にある物はお供え物だが、草むらに転がっている物は遺失物だ」 「石つぶて?」 「要するに落とし物だな。本来は遺失物管理課に届けないといけないんだけど、持ち主不明の場合は半年ほどで拾った者へと返ってくる。でもそれなりに値のつくものは適当に持ち主をでっち上げて、結局騎士団や教会の懐に入るから、わざわざ盗まれるとわかって馬鹿正直に届ける奴なんていない」 つまり落し物は見つけたもの勝ちなのだ。さすがに町のお掃除ではそこまで大っぴらに出来ないらしいけど。 ちなみに他のみんなも誘ったんだけど、 ・クアック・サルバー(偽造師)の場合 「いいかい...