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ピョルカハイム保護区の雨期について

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ノルン(以下ノ)「ルチさん、ルチさん。ついに雨期が来てしまいましたよ!」 ルチ(以下ル)「雨期! うきうきな雨期、到来!」 ノ「いや、そんないいものではないでしょう。一日中スコールのような雨が降り続きますし、荒野もほとんどが水に浸かってしまいました。あー! 拠点も水の中ですよ!」 ル「拠点、平地に作った。交易のためには仕方ない」 ノ「それはそうですが、水が引くまでは使い物になりませんね。水魔の襲撃も考えると、雨期が終わるまでは近づけないでしょう」 ル「荷物、岩壁に運んだ、大丈夫」 ノ「動物たちはヤクシさんが、こまごましたものはカラさんや他のみなさんが元々いた集落に運んでくれましたが、みなさんと再会出来るのも雨期が済んでからですね」 ル「ヤクシ兄さん、岸壁に連れてくればよかった」 ノ「みなさんは仕方ないとして、ヌンさんとネムさんがいないのも辛いですね」 ル「ヌン・ドゥガ、ネム・ピヒャ、雨期の間は自分たちの部下率いる。忙しい」 ノ「せめておふたりが近くにいてくれたら良かったのですが、集落の場所が結構離れてるんですよね」 ル「ヒルチヒキ族の縄張り、意外と広い」 ノ「そういうわけで雨期の間は、拠点が使えません。それどころかいつものメンバーは私とルチさんだけです。というわけで雨期の間の仕様が以下になります」 ル「イカ? イカ、しばらく釣ってない」 ≪雨期による制限≫ ノ「雨期の間は以下のことが制限されます」 ル「拠点使えない、仕方ない。みんないない、寂しい 」 ・拠点施設全般の使用 ・ノルン、ルチ以外のネームドキャラの使用 ・他部族の集落、砂漠への移動 ・ポータルによる転移 ・ピョルカハイム保護区外への移動 ノ「また水没等が発生しているため以下の変化が生じます」 ル「道なくなる、地図も当てにならない」 ・砂漠以外の大部分の水没 ・水魔とのランダムエンカウントの発生 ・山賊に代わって海賊の出現 ・戦闘時の天候が豪雨/雷雨/大雨のいずれか ノ「幸いモブチヒキのみなさんは参戦可能です。次回(35話)から、いよいよ彼らにも陽の目が当たるかもしれません」 ル「ノルン、正気に戻る。天気は雨、太陽見えない」 ノ「言い回しというやつですよ。ついでに現状の私たちの戦力も載せておきますね」 ル「乗せる? また獣の骨、被る?」 ノ「ルチさんほど似合わないので遠慮しておきます。私は今後のことを考えて...

ルチ・フォナ外伝 第33話「幻のピンクカバの話」

ポルパ・ティベンヌイ、エルメ・ゼベモウ・ランシア! レメ、ドミ・シルベミ・レベーテ! ……と言われたところで、ヒルチヒキ族を含めたピョルカハイム保護区諸部族の言語体系を知らないとさっぱりわからないと思うので、いわゆる標準語に翻訳しよう。ランシア狩猟隊との戦闘で負った怪我がようやく治り、どういうわけか今は拠点近くの渓谷でカバに追いかけられている。 このピョルカハイム保護区において、カバに追いかけられるほど不吉で不名誉なことはない。土煙と砂利を巻き上げながら爆走するカバから逃げながら、私は今にも破れそうな肺にありったけの空気を流し込んだ。 「カバババババ! カバババババ!」 逃げても逃げてもカバは追いかけてくる。こっちが崖を登って撒こうとしても、絶対に諦めることなく執拗に追いかけてくる。おそらく地の果てまでだって追いかけてくるだろうけど、それまでには私の体力が尽きてしまうし、さらにそれより先に足に限界が来てしまう。 いつまでも逃げてられるかとベリニャ式狙撃銃で頭や足を撃ってみたところで、転がり始めた岩がそう簡単には止まらないように、走り出したカバも簡単には止まらない。 ちなみにカバババババという銃声にも近い音は、カバから漏れてくる鳴き声だ。 まったく、どうしてこんなことになったんだか……崖をどうにか上りながら私はカバの鼻の辺りに、苦し紛れの銃弾を撃ち込んだ。 ◆❖◇◇❖◆ 話は少しだけ、川魚の遡上ほどではない時間だけ遡る。 ヘイルワードの矢に貫かれた左肩が完治した私は、暇そうにあれこれと手を動かしていたノルンを誘って釣りに出掛けた。せっかくの久しぶりの釣りだからと、普段のヴァッカレラ族の縄張り近くの川ではなく、もう少し離れた場所にある渓谷を釣り場に選んだ。 その渓谷はトビウオが大漁に棲む知る釣り人ぞ知る穴場で、今の時期だとトビウオ以外の魚も沢山釣れる。 「トビウオですか?」 「そう、トビウオ。渓谷に棲んでる」 わざわざ説明するまでもないけど、トビウオはその名の通りエラの辺りから翅状のヒレを生やした魚だ。ヒレを鳥や虫のように羽ばたかせて、その名の通り空を飛ぶことが出来る。もちろん短い時間なら、空中に留まることも可能だ。とはいえ魚だから一日の大半は水の中で過ごして、餌を獲る時だけ水中から飛び出してくる。トビウオが食べる獲物は主に小さめの鳥や小型の猛禽なんかで、気が向いたら崖...

ルチ・フォナ外伝 第32話「強弓と猟銃の競演と世界を揺るがす古大蛇の話」

冒険者であれ教会の僧兵であれ、人間は依頼された任務を忠実に果たそうと頑張るものではありますが、それもすべて命あっての物種というやつです。大怪我を負った仲間たちがいる中で差し伸べられた善意の手を振りほどけるような人たちであれば、もしかしたら信仰心が命を上回る僧兵であれば拒むこともあり得るのでしょうが、生存と帰還に重きを置く冒険者であればそのてを握り返すでしょう。 その背中に故郷の村だとか恋人の住む家だとか、そういったものがあれば話は変わってきますが、むしろそういったものを背にしているのは私たちの側です。故郷でもなければ恋人も今のところいませんが、日々暮らしている拠点がありますからね、ここは敵と手を組んででも乗り切るべきでしょう。 「みなさん、ここはひとつ助け合いませんか?」 予測していなかった跳弾で顔を撃たれて気を失った隊長に、大地を引き裂くイェムホキエムの古大蛇が放った岩で腹や足や押し潰された仲間たち、半数もの負傷者を抱えてしまっては名のある冒険者パーティーでも救いの手に縋らざるを得ません。 ランシア狩猟隊、冒険者の町スルークハウゼンを拠点とする弓使いの名門です。その名からもわかるように緑豊かな森を抱えるランシア領の狩人たちで、7人と少数ながらも全員が凄腕の精鋭パーティー、弓の腕は先の戦闘で見せつけられた通りです。ルチさんはリーダーのマティアス・ヘイルワードを見事倒してみせましたけど、古大蛇が頻繁に彼らの妨害となる行動を起こしたことと、偶然と運が左右したことが大きいでしょう。もちろんルチさんの銃の腕があっての話ですが。 とはいえ勝ちは勝ちです。向こうからしたらパーティーは半壊状態、こちらは負傷した上に疲労困憊とはいえヘイルワードを倒したほどの狙撃手が残り、私含めて他のみんなも無傷に近い状態です。分が悪いと飲み込んでくれればそれで良し、感謝の気持ちを抱いていただければさらに良し、共に手を取り合って古大蛇の討伐に協力してもらいたいものです。 「俺たちにも冒険者としての誇りがある。依頼には背けない」 まったく、これだから堅物な人は……いや、そもそもそんな仕事に忠実な人たちでも無いでしょうに。命と天秤に掛けて依頼に傾くなら、端から教会に所属すればいいわけですからね。 「あなた方の受けた依頼は古大蛇の偵察と邪魔者の排除ですよね? どうですか? あの蛇が本当に人間が制御出来て、...

ルチ・フォナ外伝 第31話「蒲焼きには向いていない大蛇の話」

ペネルエメ・ツッタミャツ・イェムホキエム・ワグマシュ! ホッシャヌ・レメメポ・デヌ・ワサヒャヒ・ボバーポン! ……と言われたところで、ヒルチヒキ族を含めたピョルカハイム保護区諸部族の言語体系を知らないとさっぱりわからないと思うので、いわゆる標準語に翻訳しよう。 連れ帰った荒野の王が言うには、ピョルカハイム保護区の外周部分に現れたのはイェムホキエムの古大蛇。元々はグローツラングという川蛇の一種で、数百年も前にドラゴンの肉か臓腑を食べて変異したものだ。ドラゴン種族の血肉には他の種族を根源から変えてしまうほどの力があるらしく、ではその肉や臓腑がどこにあるのかというと地の底、一部の鉱山の地下にあるのだという。鉱山には自然発生的に誕生したものと地竜の遺体から誕生したものがあって、魔法銀や精霊銀のような魔力を帯びた石、ロンダリア鋼、ランバール銀、ベルマー鉱石の最近発見された頑丈で優れた鉱石は地竜の鱗や外皮から誕生したらしい。 あの蛇は地中を掘り進んで私たちでは貫けない岩盤の下に潜り込み、うっかり地竜の肉を食べて巨大化してしまったのだ。その時は5つの部族を喰い尽くして地底深くに眠りについたのだけど、なんのきっかけがあったのか目を覚まして数百年ぶりに地上に現れたみたい。 ちなみにグローツラングは味は淡白なものの臭みが少なく歯応えもよく、普通のものでも体長10メートルから50メートルに及ぶので、1匹捕まえるだけでも大量の肉が確保できる。北部の部族は氷混じりの水の中に沈めて、必要な時に素焼きにして食べるそうだけど、南の方では新鮮なうちに塩や味噌を塗って火炙りにして、残りは干物にしてしまう。 私も1回だけ食べたことがあるけど、あの味は他の蛇とは比べ物にならない。ただでさえ大量の肉が手に入る蛇なのに、あれだけの大きさがあったらヒルチヒキ族全員で分けてもしばらく困らない量が取れる。 だったらしないわけにはいかないのだ、巨大蛇食べ放題パーティーを……! 「決めた。大蛇、捕まえる、みんなで食べる」 そう宣言したらノルンを始め、みんなが呆れた顔を向けてきた。その直後、無理だとか危険だとか馬鹿なのかとか色々辛辣な言葉が飛んできたけど、そもそもグローツラングはそんなに賢い生き物ではない。獲物がいたら本能のままに襲い掛かるし、天敵も少ないから腹が減っていないうちは人間や獣がいても構わずその場に留まったり...