ルチ・フォナ外伝 第31話「蒲焼きには向いていない大蛇の話」
ペネルエメ・ツッタミャツ・イェムホキエム・ワグマシュ! ホッシャヌ・レメメポ・デヌ・ワサヒャヒ・ボバーポン! ……と言われたところで、ヒルチヒキ族を含めたピョルカハイム保護区諸部族の言語体系を知らないとさっぱりわからないと思うので、いわゆる標準語に翻訳しよう。 連れ帰った荒野の王が言うには、ピョルカハイム保護区の外周部分に現れたのはイェムホキエムの古大蛇。元々はグローツラングという川蛇の一種で、数百年も前にドラゴンの肉か臓腑を食べて変異したものだ。ドラゴン種族の血肉には他の種族を根源から変えてしまうほどの力があるらしく、ではその肉や臓腑がどこにあるのかというと地の底、一部の鉱山の地下にあるのだという。鉱山には自然発生的に誕生したものと地竜の遺体から誕生したものがあって、魔法銀や精霊銀のような魔力を帯びた石、ロンダリア鋼、ランバール銀、ベルマー鉱石の最近発見された頑丈で優れた鉱石は地竜の鱗や外皮から誕生したらしい。 あの蛇は地中を掘り進んで私たちでは貫けない岩盤の下に潜り込み、うっかり地竜の肉を食べて巨大化してしまったのだ。その時は5つの部族を喰い尽くして地底深くに眠りについたのだけど、なんのきっかけがあったのか目を覚まして数百年ぶりに地上に現れたみたい。 ちなみにグローツラングは味は淡白なものの臭みが少なく歯応えもよく、普通のものでも体長10メートルから50メートルに及ぶので、1匹捕まえるだけでも大量の肉が確保できる。北部の部族は氷混じりの水の中に沈めて、必要な時に素焼きにして食べるそうだけど、南の方では新鮮なうちに塩や味噌を塗って火炙りにして、残りは干物にしてしまう。 私も1回だけ食べたことがあるけど、あの味は他の蛇とは比べ物にならない。ただでさえ大量の肉が手に入る蛇なのに、あれだけの大きさがあったらヒルチヒキ族全員で分けてもしばらく困らない量が取れる。 だったらしないわけにはいかないのだ、巨大蛇食べ放題パーティーを……! 「決めた。大蛇、捕まえる、みんなで食べる」 そう宣言したらノルンを始め、みんなが呆れた顔を向けてきた。その直後、無理だとか危険だとか馬鹿なのかとか色々辛辣な言葉が飛んできたけど、そもそもグローツラングはそんなに賢い生き物ではない。獲物がいたら本能のままに襲い掛かるし、天敵も少ないから腹が減っていないうちは人間や獣がいても構わずその場に留まったり...