もぐれ！モグリール治療院 おまけ「攻城兵器を手に入れよう」

私たちの拠点の荷物で、どうしても持っていけない本や家具といった一式をピリラ姉ちゃんの家に預けて、ようやくスルークハウゼンから旅立とうとしていたら、目の前を巨大な弩を乗せた車輪付きの荷台が通り過ぎた。弩はクロスボウをそのまま大きくした造りで、通常は指くらいの長さの鏃を腕くらいまで大型化させた矢を放つみたいで、荷台の上に銛のような矢が何本も積み込んであった。

「あれはバリスタ、簡単にいえば攻城兵器だな。スルークハウゼンは城壁に囲まれた、どっちかというと守る側だからあまり見かけないが、城壁の上の見張り台に何基か設置されてる」

パーティーの知恵袋ことサイクロプスのでっぷりが、指を斜め上へと向けて説明してくれた。指の向いた方向には城壁と見張り台があって、確かにその横に大型の弩砲が設置されている。普段は使われることはないけど、侵入者やモンスターの襲撃が起きた際には弓や銃よりもずっと遠くまで大型の矢をぶち込むのだとか。

もちろん単なる射程が長い武器というだけではない。バリスタも含めた攻城兵器は城塞の守り以外にも使われていて、その名の通り城や砦を落とすのが本領。防衛では密集した敵を大雑把に崩すために使うけど、むしろ動かない壁や櫓を攻めるのが本来の使い方。当たり前だけど、草原を駆けまわる騎士や単独で動き回る兵士を狙うようなものではないのだ。

あとはとりあえず威嚇代わりに１発２発ぶち込んで、当たればよし、当たらなくても止まるとやばいぞって警戒させるだけでもよし。そう考えたら私のパーティーにもひとつくらい欲しいな。

「それを移動可能にしたのが、まさしくあれだ。なんで外をうろうろしてるのかは知らないが」

「野良バリスタかな？」

「犬じゃないんだから、バリスタがうろうろしてたら怖いだろ」

そうはいうけど、うちには元々野良だったゴーレムだっているし、あのバリスタも野良かもしれないよ。もし野良だったらノーラ２号として、うちの飼いバリスタにしよう。

「おーい、そこのバリスタ！　ちょっと止まって！」

野良バリスタの気を引くための干し肉を片手に近づいてみると、バリスタはひとりの青年が引っ張っていて、どうやら野良バリスタだけでなく野良青年と一緒だったみたい。青年には悪いけどうちのパーティーは人間率が低いから、バリスタと離れ離れにした方がいいのかな。いや、でも離れ離れにするのもかわいそうな気もするし、しばらく一緒に飼って自立させてから里子に出すというのも……。

「あのー、何か用かい？」

青年は戸惑った様子で私たちに目を向ける。その気持ちもわからなくはない、なんせうちのパーティーは強くてかわいい私ことヤミーちゃん、部族の少女と戦士たち、ガラの悪いチンピラふたり、最近仕事中におしっこを掛けられて心が折れたノッカーアップ、子供のゴブリン３人、知恵者のサイクロプス、武装したオーク、常におなかを空かせたウェンディゴ、陸上で暮らすタコ、獰猛な羊、樽に詰められたウーズだ。

もしかしたら食べられるとか思ってるのかもしれない。大丈夫、私たちは人間にも優しいパーティーだからそんなことはしない。敵対したら遠慮なく頭をかち割るけど。

「いや、野良バリスタがいるなーって思って」

「……野良ではないんだよ。ちょっと待ち合わせしててね、そろそろ来るはずなんだけど」

青年は不安そうに辺りをきょろきょろと見回しながら、誰も来る気配がないのを察して、

「君たち、知らないかな？　闇医者のモグリールに紹介されたんだけど、ウルフヘズナルが妙な集団を率いてるパーティーで……」

私は背負った鞄の中から狼の毛皮を取り出して、顔の横でかわいらしく掲げてみせた。

「もしかして君がウルフヘズナルのヤミーちゃん？」

「もしかしなくても私がヤミーちゃんだよ」

青年は膝を曲げてその場にうずくまって、しばらく背中を丸めて考え込んだ後に、なんかもう開き直りでもしたのか覚悟した顔で立ち上がった。

「僕の名前はロナード・ヘス、見ての通りバリスタ兵だけど副業で冒険者もやってる。モグさんとはそこそこ付き合いが長くてね、今回の難民キャンプへの人道的支援に参加することになったんだ。まあ、主な役目は後方支援と護衛だけどね」

実際は難民キャンプに行って、どさくさに紛れて国境線を越えてフィアレアド王国に入国しちゃうんだけど、彼は人道支援と聞かされてるみたい。人道支援がなにかは知らないけど、人の道ってことは開拓工事みたいなものなのかな？　とりあえず野犬とか追い払えばいい？

「よろしくね、野良バリスタとおにーさん」

「ロナード・ヘスね。出来れば３日くらいの内に覚えて欲しいな」

私は野良じゃなかったバリスタと、同じく野良じゃなくなった新入りの手を握って、そのまま良いのか悪いのかよくわからない獣道の度に引き摺り込んだのだ。

ＮＥＸＴ「難民キャンプを覗いてみよう」

≪加入ユニット紹介≫

ロナード・ヘス

種　族：人間（男、２８歳）

クラス：バリスタ（レベル２２）

　　　　ＨＰ　腕力　魔力　守備　魔防　命中　回避　必殺　幸運　魅力　移動

能力値　３４　１２　　３　　５　　３　３５　　４　１２　　４　　７　　２↑０↓０（歩兵）

成長率　３５　２５　１０　１５　１０　２５　１０　１５　１０　１５

【技能】

短剣：Ｅ　剣術：Ｅ　槍術：Ｅ　斧鎚：Ｅ　弓術：Ｃ　体術：Ｅ

探索：Ｄ　魔道：Ｅ　回復：Ｅ　重装：Ｄ　馬術：Ｅ　学術：Ｄ

【装備】

バリスタ　威力２９（１６＋１＋１２）

【スキル】

【個人】緊急補充（ターン開始時、幸運％で装備の使用回数を１回復する）

【基本】命中＋５

【下級】命中＋１０

【中級】攻城兵器強化（攻城兵器の性能を１割アップさせる）

【？？】

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