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もぐれ!モグリール治療院 人物名鑑(スルークハウゼンの仲間たち編)

執筆者、クアック・サルバー ウストムィ 種族:ウェンディゴ(女、24歳) 体格:163cm、50kg 出身:ナフテハール牧場近郊 せっかく冒険者の町に来たというのに、最初に仲間になるのがウェンディゴだなんて、まったくヤミーちゃんは天性の素質を持っているのかね? ウェンディゴは人を食う亜人種族なのはいうまでもないが、彼女はその中でも特に食欲旺盛な種類であるらしい。 初期状態ではあまり戦力になるとは言い難いが、幸いにもウェンディゴも人間のクラスに転職できる。腕力を活かして戦闘職に就くもよし、補助系のスキルを集めるもよし、そこら辺は自由だよ。彼女の特異な素質に目をつけて、食べ物を使った二段階移動を駆使して、探索系に振り切ってしまうのも悪くない。幸運の成長率も決して悪くないからね。 反対に壁役や魔法には向いてないので、そっち方面は諦めることだ。 クラス:ウェンディゴ(レベル11)     HP 腕力 魔力 守備 魔防 命中 回避 必殺 幸運 魅力 移動 能力値 25  9  3  4  3 11  21  10  8  4  4↑2↓3(歩兵) 基本値 22  5  2  3  1  8  8  6  5  3 期待値 56 44 12 17 20 42  47  27 39 13 成長率 35 40 10 15 20 35 30 20 35 10 【初期技能】 短剣:D 剣術:E 槍術:E 斧鎚:E 弓術:E 体術:E 探索:C 魔道:E 回復:E 重装:E 馬術:E 学術:E 【初期装備】 鉄の短剣  威力13(4+9) 革のマント 回避+10 【スキル】 【個人】ハラペコムシ(周囲3マス以内に食べ物が置かれたら自動的にその場所に移動する) 【基本】マンイーター(人間に攻撃した時、必殺+10) 【??】 【??】 【??】 【??】 ドリー 種族:羊(オス、6歳) 体格:180cm、300kg 出身:ムゥムゥ羊牧場 ムゥムゥさんが勝手に押し付けていった羊だ。力の成長率が高いので戦力にもなるけど、羊の最大の長所は羊毛を落とすことと、成長すればレベルが上がると同時に高価な羊角を入手できる点にある。世の中、普通に生活するだけでも何かと金が要るのは言うまでもないが、強力な武器を得ようとすれば、とてつもなく金がかかるというもの。少しでも足しになってくれるといいのだが、ムゥムゥさん...

もぐれ!モグリール治療院 第4話「鉄槌を下してみよう」

冒険者ギルドの壁には色んな依頼だったり、発見した遺跡や洞窟の情報だったり、あと冒険者に対する注意書きみたいなものが貼ってあるんだけど、その中でもひときわ色褪せて薄汚れた1枚が隅っこの方にいつまでも残っている。 たまたま顔を出していたヤーブロッコに代わりに読んでもらったところ、 「……討伐依頼だな。かの邪知暴虐なる【黄金の杖王】に鉄槌を下して欲しい。手段、人数、期日は問わない。報酬は人数分払う。依頼者、シェーレンベルク騎士団。討伐難易度、10……じゅう!? よし、見なかったことにしよう」 どうやらものすごく困難な依頼状らしい。以前、受付のお姉さんに教えてもらったけど、モンスターや盗賊団なんかの討伐難易度は大きく5段階あって、1が最も低くてゴブリンと1対1でやり合うくらい。5が最も高くてデーモンの一団と戦うくらい。そしてこの依頼状に書かれている難易度は10らしいので、5段階っていうのはどこにいったのかって話になるけど、6以上の難易度がそうそう現れないだけで存在しないわけではないのだとか。それこそ魔王とか他の国の軍勢とか、人間の領域に現われたドラゴンとか。 ところでスルークハウゼンに登録している冒険者で、金の等級まで上り詰めた冒険者は7人しかいない。そいつらはいつしか七王と呼ばれるようになり、噂では魔王の討伐に成功したとか、ドラゴンの巣から鱗を持ち帰ったとか、とにかく銀以下の冒険者とは比較にもならないような偉業を成し遂げたという。 勇猛の剣王、静謐の槍王、煉獄の斧王、殲滅の鎚王、黄金の杖王、終末の弓王、不動の拳王のふたつ名と共にギルドの伝説となり、その中のひとりはこうやって討伐依頼を出されてしまっている。 ……どういうこと? なんで冒険者が討伐対象になってるの? 「えーと、騎士団への攻撃、討伐隊の度重なる撃退、武装した砦の陥落、鉱山からの略奪、穀倉地帯の壊滅、その他数えきれない敵対行為……なにやったんだろうな、この人」 「扱いが悪くて怒り狂ったとか? それにしても被害が大き過ぎるけど」 将来的に私もやってしまいそうだから偉そうなこと言えないけど、周りの人とはなるべく仲良くしておいた方が良いと思うよ。あ、鉱山潰しは私も既にやってたけど、今はあえて黙っておこう。周りとは仲良く、そう、これは仲良くするための秘密というやつなのだ。 それにしても明確に人間の敵となっている冒険者、黄...

もぐれ!モグリール治療院 おまけ「派遣任務をやってみよう」

冒険者ギルドの壁には色々と依頼が貼ってある。ほとんどはスルークハウゼンの商人や住人、他には騎士団や教会からの依頼で、内容もスルークハウゼンの近隣、近い場合は城壁内で完結するものが多い。もちろん中には見たことも聞いたこともない、どこにあるかもわからない宝石や金属を探してきてくれー、っていう無茶振りもあるけど、そんなのはすごく稀。 でも中には結構遠くの、馬や鉄道で行くような離れた町からの依頼もあって、そういうのは各地の冒険者ギルド支所に出されたものだったりする。冒険者は基本的にコツコツ働くのが嫌いな博打好きが多くて、でっかい得物を求めがちな生き物だから、支所を拠点にする冒険者自体は少ない。そういうわけで、支所に届く依頼の半分はスルークハウゼンや他の大きな町にも貼りだされる。 残念ながら場所が場所なので、旅費と報酬が釣り合ってなくて引き受ける割合は少ないんだけど、たまに面白がったり力を発揮できそうという理由で受ける者がいたりする。 「ヤミーちゃん、派遣任務はおすすめですよ!」 割となんでもおすすめしてくる受付のお姉さんが、今日も当然のようにおすすめしてくる。 「なんせヤミーちゃんのパーティーはテイマー型でしょ。支所のある町は、地域によっては亜人種族と交流があったりして、ゴブリンやサイクロプスでも歓迎してくれたりするんです。もちろん言葉が通じて、交渉に応じることが出来るのが最低条件ですけどね」 冒険者パーティーには幾つか種類があって、大半は人間と人間に近い社会生活を送るエルフやドワーフを含んだパーティー。でも中には私たちのような、魔獣やゴブリンを戦力として使うビーストテイマー、モンスターテイマーと呼ばれる集団もいる。うちのところくらい人間の割合が少ないのは、かなり珍しいそうだけど。 「というわけで、いつも猪とか鹿を狩ってばかりで冒険者らしいことを出来てないから、ここらでひとつ派遣任務をやってみようと思う!」 「いいんじゃないか? 冒険者らしいことを出来てないのは、9割方お嬢のせいだがな。先日も河原で暴れたとかなんとかって苦情の手紙が来たぞ。ちなみに手紙は、古新聞と一緒に紙屑拾いに売ったからもう無い」 私が不在の時に逸れ者部隊を率いているサイクロプスのでっぷりが、しれっと嫌味をひとつふたつ混ぜながら賛同してくれる。 「いいんじゃないですか。交渉相手に人間が必要ということなら、...

もぐれ!モグリール治療院 第3話「基礎教練を受けよう」

私が拠点にしている冒険者の町スルークハウゼンの城壁外には、主に畑と牧場と見張り櫓とちっちゃめの砦があるんだけど、城門を出て1時間ほどの場所に訓練場というものもある。訓練場は簡易的に拵えた柵と壁で何個かに区切られていて、大中小で大きさを分けた案山子の太くて頑丈なやつとか、丸を何重にも描いた的を横にズラッと並べたのとか、縄登り用のロープを何本も垂らした高い櫓とか、たぶん懸垂とかするための台とか、やたらと重そうな鉛の塊とかがあちこちに置かれていて、日々どこかで誰かしらが訓練に励んでいたりする。 冒険者ギルドに登録したての新米冒険者は、生まれや育ちに関係なく一通りの基礎教練を受けることを勧められている。まあ、ろくすっぽ体力もなければ狩りも戦闘もしたことのない貧弱なんかを冒険に行かせて、ドッグタグだけかろうじて戻ってきました、なんてことになったらそいつの身内から怒られちゃうよね。実際そういう苦情も過去にまあまあな件数あったらしく、こっちはちゃんと訓練を受けさせてますよっていうポーズも兼ねているのだとか。 それでもめんどくさいから受けない、っていうひねくれ者もいるからギルドも大変だ。 で、私は前回の怒られた件もあるので、今日からルチと一緒に基礎教練を受けることにした。私は雪国育ちだからノルドヘイムに適した鍛え方しかしてないし、ルチもピョルカハイム保護区で育ったから主に荒野と岩場での動き方しか知らない。ここまでの道中で森とか川とか線路の上をひたすら歩いたり、野盗を返り討ちにしたリ猪や鹿を狩ったりしたけど、いや、猪や鹿は毎日のように近くの森に行って狩ってるけど、きっとまだまだ知らないことの方が多いはずなのだ。 故郷のおかーさんもこう言ってた。 「もっと強い生き物とかぶちのめしたいなあ。ノルドヘイムにもドラゴンとか出てくれないかなあ」 おかーさんの言葉は特に関係なかった。私は自分より強い奴に会いに行くみたいな趣味はないから、ドラゴンとか一生出遭わなくていい。ドラゴン倒せたら、もう訓練とかいらないでしょ、強さの到達点だもん。おかーさんがドラゴンを倒せるかも知らない……さすがにドラゴンは無理だと思う。 「教練、種類、たくさん。どれ選ぶ?」 「ギルドは一通り受けなさいって言ってたけど、なにがあったっけ?」 ギルドから渡された訓練場のパンフレットには、三等身くらいのかわいい衛兵が剣を打ち合っ...

もぐれ!モグリール治療院 第2話「町のお掃除をしよう」

冒険者として堂々と道を歩きたきゃ、これを避けるわけにはいかねえな。 とされる仕事が幾つかある。その最たる例が町内清掃だ。これといった危険もなく、報酬が高いわけでもなく、成し遂げたからといって自慢になるわけでもないけど、これに参加するのとしないのとでは町の人からの扱いに天と地の差が出る。ただでさえガラの悪いのが多い冒険者たちが、ちょっとでも自分たちは無害で健康的で安心安全だと思われるためには、こうした地道な活動も大切なのだとか。 冒険者が生活する上で住人と仲良くなって損はないし、物騒な連中が朝早くから掃除をしてくれたら住民たちも安心してくれるに違いない、というギルドの思惑もあって毎週のように壁に張り出される。ご丁寧にホウキとかゴミバサミを笑顔で手にする絵も添えて。 「ヤミーちゃんもお掃除やっておきましょう」 受付のお姉さんも強く勧めてくる。 掃除は好きじゃないけど、確かに一理ある。自分の家の前を歩いているのが、なに考えてるのかわからない化け物だったら嫌だけど、同じようにゴミのひとつも拾ってくれる生き物だったら安心できる、っていう気持ちはわからなくもない。私だって自分の家のそばを人食い熊が歩いてたらナイフの一本も握るところだけど、ゴミ拾いの人だったらそこまで警戒する必要もない。顔見知りだったら挨拶とかしてもいいし、暇潰しに立ち話をするかもしれない。 そんな気持ちを悪用して、善人を装って家主が金持ちかどうか探る連中もいるので、はいどうぞって歓迎してしまうのも危険だったりするけど。 「ヤミーちゃんは城壁の外を拠点にしてるので、なおさらやっておくべきです。今のうちに住人たちの信頼度を稼いでおきましょう」 受付のお姉さんがさらに強く勧めてくる。さては受け手が少ないと見た。冒険者になってまで掃除をしたいと思う人は少ないし、受けるのはよっぽど暇な人か、町が汚いのが許せないほどのきれい好き、あとは怪我の治療中で戦闘は勘弁なーみたいな人くらいかも。 「ヤミーちゃん、お掃除はおすすめですよ!」 「じゃあ、やる」 ちょっと強すぎる感もある勧めに、私は首を縦に振ることにしたのだ。 ◆❖◇❖◆ ところで町内清掃といっても、掃除場所によって報酬と貢献度が変わる。一番報酬が高いのは下水道清掃、要するに臭くて汚い排水路を、ゴミで詰まったりしないように延々と浚い続けるというもの。一番簡単で報酬も低いの...