もぐれ!モグリール治療院 おまけ「衛兵さんのお仕事」
スルークハウゼンの仕事? まあ、割と暇だよ。なんせスルークハウゼンはでかい都市だ、ハルトノー諸侯連合領内でもここまで大きい都市は両手で数えられるくらいしかない。派遣される騎士団の数も、それに連なる俺たち衛兵の数もそこらの町とは段違いだ。
おまけにここは冒険者の町、冒険者なんて頭のネジが1本も2本も下手したら30本くらい外れてる上に、社会性の低さを腕っ節で帳消しにするような連中だ。まだまだヒヨッコね、なんて娼館のお姉さん方に小馬鹿にされるような若いのでもボアだのブルだの平然と狩ってくるし、一部の間違っても喧嘩を売ってはいけないような熟練の中年男たちになると、デーモンの親玉みたいなのの首を穂先にぶら提げて、鼻歌なんか歌いながら帰ってくる。さらにその上には勇者とか英雄とかって呼ばれるような人の皮を被った化け物がいるんだから、わざわざそんな場所に攻め込もうなんて馬鹿は滅多に現れない。
せいぜい街中で酔っ払い同士が喧嘩したとか、生け捕りにした虎が檻から逃げ出したとか、妙な魔道士が建物ごと爆発させたとか、まあそんな程度で基本的には暇で平和。
それこそ他国が大軍勢で侵攻してくる、なんて時は騎士団様の出番で、俺たち衛兵は住人の避難誘導とか貴族の護衛とか、大体がそんな役回り。最前線らしい場所には赴かず、町の平和を維持するためにきっちり程々に仕事をして、毎日酒場に通うのは無理でも週に2日は酒を飲めるくらいには給金を貰う。それが俺たち衛兵の仕事だ。
というわけで今日も城門の警備という名の、通行証や札のチェック係に精を出す。
オルトア商業連合発行の許可証、はい、通ってよーし。
第3地区の住民票、はい、おかえりなさーい。
冒険者用の銅の認識票、新人かい? 気をつけていってきなー。
おお、これが都市運営議会の議員様、おつかれさまでーす。
なんだてめえヤブ医者、ペコペコしてる姿を笑うんじゃねえよ。
あ、通行証確認しますねー、はい、どうぞー。
はい、止まってー。札忘れた? 駄目です、取りに戻りなさい。
適度に愛想を振りまいて相手の機嫌を損ねないようにしながら、それでも止める時はしっかり止める。きっちりかっちりし過ぎず適度に楽をしながら、最低限の仕事をこなして対人関係は壊さない。
隣で頑張ってる新人衛兵くん、こういう仕事が出来るようになって一人前なんだぜ。
「モルゲン先輩、見てないで手伝ってくださいよ」
「だーめ、俺はそういう甘やかしはしねえの。手を貸すのは本当にわかんねえ時だけ」
怨めしそうな目を向ける後輩を適当にあしらって、形だけでもと持たされている平凡な鉄の槍に体重を預ける。こうやって真面目に立ってるようで、実はちょっと休んでる、こういうベテランだけが持つ技術が長続きの秘訣なのだ。
「おつかれさまー!」
「はい、ちょっと待ってねー」
どさくさに紛れて通り抜けようとする狼の毛皮を纏った少女と、その後ろをついて歩く獣の頭蓋骨を被った似たような年齢の少女を呼び止める。
なんだなんだ、このやたらと個性の強そうなコンビは。北の方の蛮族がこんな格好をするって冒険者が言ってたな。もうひとりはピョルカハイム保護区の原住民か? どういう組み合わせだよ?
「はい、通行証見せて」
うっかり殴られたらどうしよう、なんて恐怖心を抱きながら今日も今日とて仕事をこなす俺。
おい、新人、見てるか? 蛮族相手でも一歩も引かない責任感、見習いたいだろう? どうだ、手伝ってくれてもいいんだぜ。
(先輩、お手本みせてくださいよー)
(てめえ、俺の悪いとこばっかり真似すんじゃねえ! あ、そいつには気をつけろよ。町の要注意人物リストの1桁台だからな!)
身振り手振りで後輩に警戒と苦情を伝えながら、自分の目の前にいる厄介の種になりそうなのと後輩の前にいる厄介者、どっちも対応しないといけないなんて骨が折れるぜ、と明日の分の疲労ノルマを早くも熟したりしたのだった。
とぅーびーこんてぃにゅーど……ってな
≪NPC紹介≫
モルゲン
種 族:人間(男、38歳)
クラス:衛兵(レベル15)
HP 腕力 魔力 守備 魔防 命中 回避 必殺 幸運 魅力 移動
能力値 32 9 2 11 5 9 3 2 6 7 3↑2↓3(歩兵)
基本値 28 5 1 8 3 5 0 1 4 4
補正込 15
成長率 30 30 10 20 15 30 20 10 15 20
【技能】
短剣:E 剣術:D 槍術:C 斧鎚:D 弓術:E 体術:E
探索:E 魔道:E 回復:E 重装:C 馬術:D 学術:D
【装備】
鉄の槍 威力17(8+9)
鉄の盾 守備+2
【スキル】
【個人】適度な休憩(未行動で待機した時、2分の1の確率でHP10%か状態異常を回復)
【基本】守備+2
【戦闘】鎮圧(市街地での戦闘時、腕力+2)
【戦闘】門番(砦や城門にいる時、守備+2)
【??】
【??】